第5章 何でも屋
ご機嫌な副隊長と別れ、十一番隊の隊舎に向かう。
稽古中なのか、中からは隊士達の悲鳴が聞こえる。
昔と変わらない。
「おっと……」
扉を開けると、ちょうど飛ばされた隊士が飛び出して来た。
危うく扉に激突するところだったな。
いや、私が開けてしまったから場外に出てしまって被害を拡大させちゃったかも。
「あ、神咲隊長。ほんとに来てくれたんすね」
「もちろん。
書類は引き受けますね、どこかお借り出来る机ありますか?」
「やぁ、久しぶりだね。
こっちの僕の席でやりなよ、僕は一角の席使うからさ」
「分かりました」
私と綾瀬川さんが書類をやり、残りの人は刀の手入れや喧嘩をしていて誰1人書類に手をつけない。
これでは滞る一方だ、1人で処理出来る量ではない。
「……見ての通りの現状さ、書類をやるのはいつも僕1人。
しかも隊長ってば仕事してると別の任務に行かせるんだよ。
仕事なんかいつでも出来るってね」
「あー……想像がつきます」
今後は十一番隊の書類も引き受けた方が良さそうね。
重要書類も滞るし、何より綾瀬川さんの負担が大きそうだ。
このままではいつか倒れてしまう。
「今後は半分程うちの隊が書類を引き受けますよ」
「ありがとう、助かるよ」
「綾瀬川さん、そんな女と話してる暇あったら俺らと稽古しましょうよ!」
1人の男が会話の途中で割り込んで来る。
「なに、君はこの状況見ても分からないの?
僕は今忙しい、君の相手なんてしてる暇ないの。
悪いけど他を当たってくれる?」
視線を合わせず、冷たく言い放つ。
先程までの柔らかい雰囲気が嘘のように、冷たく刺々しい空気を漂わせている。
「じゃあ……」
男の目がこちらを向いた。
その表情は挑戦的と言うよりは私を見下しているような、そんなものだ。
他の隊士達もこちらを向いてニヤニヤと笑っている。
なんだか面倒そうな気がするなぁ。
「あんたが相手してくれよ」
「私?」