第1章 引退、そして始まり
場所は変わり、技術開発局。
その巨大でグロテスクな扉の前に佇む千早。
「ここ、こんなに気味の悪い場所なの……?」
私の居た頃にはない斬新なデザインに首を傾げる。
扉を押せば、悲鳴のような音を上げてゆっくり開いた。
「失礼します。
神咲と言います、山本総隊長の命令で来ました。
涅隊長は居らっしゃいますか?」
中は薄暗く、コンピュータの明かりが点いているだけだった。
扉を開けても中に居る隊士達は振り返ることはなかった。
「なんだネ、五月蝿いヨ。
ワタシは忙しいんだ、下らない理由で隊首会に招集されて研究が押しているんだヨ。
面倒な頼み事なら阿近のところにでも行くんだネ」
チラリと奥の部屋から顔を出した、隊長羽織を来た男の人。
青い髪に黒と白塗りの顔。
凄く独特な出で立ちだ。
その男の人は露骨に嫌そうな顔をするとまた部屋に戻って行った。
「ネム!!
案内だけして来い、あの雌豚を阿近のところまで!」
「はい、マユリ様」
なんだか凄く罵られた気がするけど……まぁ、気にしない方が良いかな。
「神咲様。
案内します、どうぞこちらへ」
部屋から出て来た女性のあとに続き、廊下の1番端の部屋の前で止まった。
腕に副官章を付けているところを見ると、この人が12番隊の副隊長なのだろう。
ドアをノックをすると返事を待たずに部屋へ入る女性。
「阿近さん。
こちらが例の神咲様。
では私は案内だけですので、あとはお2人でごゆっくりと」
それだけ告げると部屋から出て行ってしまう。
なんだろう、凄くお仕事の邪魔してしまったようでいたたまれなくなる。
今は忙しい時期なのだろうか、なんだか申し訳ないなぁ……。
「神咲です、実は……」
「あー……義眼か。今片付けるから少しだけ待ってろ」
ようやくこちらを振り向いた男の人は死覇装の上から白衣を着ていて。
煙草を咥え、額に3つの小さなツノが生えていた。
「礼儀とか、んなもん知らねぇ。
気に入らねぇなら敬語使うが、どうだ?」
「いえ、大丈夫です。
特に気にしないので、話しやすいようにしてください」
「そうか」