第1章 引退、そして始まり
総隊長に無理矢理ことを運ばれたかと思えば、今日はもう帰って良いぞと隊首室を追い出された。
要件だけ言うところ、昔と全然変わってないな。
疲れた身体を引きずりながら、義眼を作って貰いに技術開発局へ向かう。
しばらく前線から遠のいていた身体はきっと勘を取り戻すまで時間が掛かるだろう。
私の居た頃からかなり時が経っているし、きっと私のことを知らない隊士達の方が多いだろう。
ポッと出の女が急に隊長になるだなんて、反感を買わないだろうか。
「護廷十三隊……か」
真っ暗な闇しか映さない左目を手で覆い、深い息を吐き出すと覚悟を決めた。
今更どう足掻いても総隊長が意志を変えることは有り得ない。
あの人は1度決めたことは決して曲げない。
引退した私に連絡をして来るところを見ると、相当切羽詰まった状態なのだろう。
*****
その日の内に新隊長就任の情報は各隊に広まった。
近々新しい隊長が着任すること、かつて護廷十三隊で隊長を務めていた人物であること、着任する隊はまだ決まっていないこと。
噂に尾ひれがつき、デマ情報も多く流れている。
彼女を知る者は懐かしさに顔を綻ばせた。
「浮竹、聞いたかい?
その復帰する隊長、千早ちゃんなんだって。
緊急の隊首会を開くなんて言ったから何があったかと思えばね〜。
千早ちゃんかぁ、懐かしいなぁ……」
「あぁ、そういえば隊士達も何か話していたな。
先生から名前を聞いてもしかしてとは思ったが、やはりあの千早なんだな。
生きていてくれて本当に良かった」
「千早ちゃん益々美人になってたらどーしよ。
僕口説いちゃおっかな、フリーだし」
「あらあら、お元気ですこと。
ですが千早を傷つけるのだけはやめてくださいね、京楽隊長」
「や、やだなぁ、卯ノ花隊長!あはは……」
浮竹、京楽、卯ノ花が千早の話に花を咲かせる。