第4章 十四番隊、始動初日
「千早は昔から仕事に集中すると、時間を忘れてやる癖があるからな。
だから京楽とたまに様子を見に行こうって話をしてたんだ。
目を離すとすぐにこん詰めてやろうとするからな」
吉良副隊長にお茶と茶菓子を差し出した。
縁側と給湯室が近い設計になっていて良かった。
これなら休憩の時に縁側で日向ぼっこしながらのんびり出来る。
流石は山本総隊長の設計だ。
「もう、いつまで子供扱いするの?」
「俺にとってはまだ可愛い妹みたいな感じだ」
「もう良い歳なのに。可愛いって言われるの恥ずかしい」
と苦笑すれば、吉良副隊長が声を上げた。
「あ、すみません。見えなかったもので……」
「お世辞が上手いなぁ」
「お世辞だなんてそんな!僕は本当に……って何を言ってるんだろう」
吉良副隊長はとても真面目だ。
休憩中でもちゃんと隊長と副隊長の線を引いて接している。
良く出来た副官だ。
「それにしても十四番隊とはな、驚いたよ。
千早はてっきり元居た三番隊に戻るのかと勝手に思ってたから」
「うん、私もそう思ってた。三番隊じゃなくても、欠番の五か九かなって」
「神咲隊長は三番隊の隊長だったのですか?」
「まぁ、昔ね……」
「その頃とやはり違いますか?今の三番隊の様子は」
「隊長が変わったら隊の雰囲気なんて変わるものですよ。
隊長の色が変われば隊士の色も変わる。私の時と比べなくて良いんですよ」
「そういうものでしょうか……僕は市丸隊長みたいに周りを見通す力がありません。
他の隊士からも、隊長が裏切った隊として評判は良くありませんし、僕自身も頼りないと言われてしまってます……」
湯呑みを握る手に力が篭っている。
これは三隊長が裏切った時から抱えていたことなのだろう。
誰にも言えず、自分の中にしまい込んで隠して来た、紛れもない吉良副隊長の本音。
「周りの言葉の全てを受け止める必要はありません。
影でコソコソと言う人達は1人で頑張る吉良副隊長に後ろめたい気持ちがあるから言ってるんです。
そんなやっかみに耳を傾けてあげることはないです。
吉良副隊長は努力家で今は結果が出ずに辛いでしょうが、続けていれば必ず報われる時があります。
だから、自分を信じて」
「っ……ありがとうございます!そう言って頂けると少し心が軽くなった気がします」