第3章 呑んで、呑まれて、食べられて
彼女を背中に乗せ、傷に響かせないようにゆっくり歩く。
「先に帰ってても良いよ?ちょっと遅くなっちゃうし」
「いや、着いて行く」
彼女の道案内の声だけが響く夜道。
私と阿近の間に会話はほとんどない。
いつもなら苦はないけど、今日は3人な為かちょっとだけ気まずい。
「ありがとうございました」
「どう致しまして。お大事になさってくださいね」
無事に部屋まで送り届けることが出来た。
彼女の部屋は私の部屋と真逆だった為、かなり離れてしまっている。
「ごめんね、阿近」
「別に、千早のお節介は今に始まったことじゃねぇ。気にすんな」
と、笑う。
「なんか褒められてないような……」
「当然だ、褒めてねぇからな」
「阿近は毒舌だよね。本音を包み隠さないと言うか、濁したりしないよね」
「そりゃ気を遣ってねぇからな」
「ならいっか。
それより酔い冷めちゃったでしょ。もう1件寄ってく?
今度は奢るよ、何か飲みたいお酒ある?」
「……千早の部屋は近ぇのか?」
「ここからだとそこまで近くはないかな、反対方向来ちゃったし」
「千早の部屋で呑む。常備酒ぐれぇあんだろ」
「まぁ、多少は。少し歩くけど良い?」
「あぁ」
阿近を私の部屋に招く。
荷解きしたばかりの生活感のない部屋だ。
なんだかちょっと緊張する。