第3章 呑んで、呑まれて、食べられて
「あ、千早。このお酒も美味しいわよ〜。
あたしのオススメ!ちょっとピリッとするけど飲みやすいの」
乱菊副隊長が差し出してくれたお酒を1口貰えば、グラリと一気に視界が歪んだ。
「強い……」
「おい、そりゃ店で1番度数の高ぇ酒だろ。
大丈夫か?千早」
「んん、もう飲めない……」
呂律がゆっくりになり、フワフワした気分になる。
身体は温かくて一気に眠気が襲って来る。
「完全に酔ったみてぇだな、顔がとけてる」
クックッと喉を鳴らして笑う阿近。
カッコイイ。
少し出っ張った喉仏は男性らしさの中に色っぽさを含んでいる。
「阿近、お酒、酔ってない?」
「あぁ、まだ大丈夫だ」
「乱菊、お酒、ある?」
「へ?あ、お酒?あるわよ!まだ沢山!」
「呑む〜」
「やめとけ。それ以上呑むと明日二日酔いで死ぬぞ。
もう手遅れかも知れねぇが」
乱菊から受け取ったお酒を取り上げた阿近。
「阿近、頂戴。意地悪しないで」
「ダメだ」
「お願い、欲しいの、頂戴」
まだお酒を呑みたくて、上にある阿近の目を見つめて強請る。
その言葉にゴクリと副隊長達が唾を飲み込んだのは、私は知らない。
「阿近、お願い、欲しいの……」
ピタリと身体をくっつけ、お酒を強請る。
お酒を取り返そうと知らず知らずの内に身体をギュウギュウと押し付ける形になっていた。
「はぁ……松本」
「なっ、なに!?」
「釣りは要らねぇ。俺はこの酔っ払い連れて先帰る」
お財布からお金を取り出し、机の上に置いた阿近。
その金額は今注文している料理の倍以上はあるだろう。
それを躊躇いなく払える阿近って……。
「おら、行くぞ」
「おんぶ」
「馬鹿言うなら置いてくぞ」
「ごめんなさい、歩くから置いてかないで」
腕を引かれて、阿近に寄りかかるようにして居酒屋を去った。
「千早は酔うと更に男殺しね……」
人知れず乱菊がそう漏らすのだった。