第3章 呑んで、呑まれて、食べられて
阿近の後ろを歩いて居酒屋に向かう。
座っている時はあんまり分からなかったけど、阿近って意外と背が高い。
居酒屋に向かう街並みも昔とは随分違う。
彩りも、建物の数も。
阿近行きつけの居酒屋に着き、席へと案内された。
どうやら席は1席しか空いていなかったらしく、私達の席は4名席だ。
「あら、空いてないの!?」
すぐあとに入ったであろう人が驚く声がする。
どこかで聞いたような声だけど、どこだっけ……?
「じゃ、今日は相席で良いわ。席はそうね……あそこ!」
自分達には関係ないと特に意識することなくメニュー表を眺める。
価格もそんなに高くないのにメニューは凄く豊富だ。
選びきれない。
「ここ、座るわね」
私の隣にあった椅子が引かれると同時に上から掛けられた声。
驚いて顔を上げれば、目の前には知った顔。
「松本副隊長……お疲れ様です。相席ですか?」
「そ。それに松本副隊長だなんて堅いじゃない。
乱菊で良いって言ったわよね?」
「え、でも……」
「ま、今は良いわ。呑みの席で親睦を深めましょ。
阿近も良いわよね?」
「好きにしろ」
面倒そうに頭を掻く。
「連れも一緒で良いかしら」
「どうせそのつもりだろ」
「分かってるじゃない」
連れ、と呼ばれて松本副隊長の後ろを見れば、阿散井副隊長と檜佐木副隊長が立っている。
4名席に大人が5名。
少し窮屈だけど、詰めれば座れないことはない。
「千早は阿近の隣に行きなさい」
「千早って……すっかり上下関係ひっくり返ってるじゃないですか、乱菊さん!」
阿散井副隊長が言う。
「今は執務中じゃないし、良いですよ」
「そそ、千早もこう言ってるんだし。
あんたは細かいこと気にし過ぎなのよ、そんな見た目して」
「見た目は関係ないじゃないっすか」