第3章 呑んで、呑まれて、食べられて
全てを片付け終えたあとに阿近を見ると、ちょうど実験が一段落したようだった。
ふぅ……と息を吐き出し、椅子の背もたれに身体を預ける。
「終わり?」
「実験はな。今日予定してた分は片した。
まだ部屋の片付けが残ってる」
身体を伸ばしながら言う。
伸びをしている時の声はなんというか……色っぽい。
変にドキドキしてしまう。
「悪いな、随分と待たせて。暇だったろ。すぐ片付け……」
「迷惑だったかな……?」
振り返り、こちらを向いて固まる阿近。
それもそうだ、部屋の状態がさっきまでとは異なっているのだから。
触られたくない場所とかなかったかな。
今更ながら少し不安になる。
「お節介」
「ご、ごめん……」
やっぱり他人に触られたくなかったよね。
勝手な行動をした数分前の自分を責める。
「バカ、誰が嫌だっつった。短時間でよくここまで片付け出来たな」
ポンポンと慰めるように頭を撫でる阿近。
その手は意外にも大きくかった。
体温は私よりも低いのだろう、少しひんやりしている。
「片付けとか補佐は得意なの。それでね、この本棚なんだけどちょっと仕掛けがあって……」
「……へぇ、そりゃ凄ぇな」
本棚の機能について説明する。
目を丸くさせて話を聞く阿近が可愛い。
「今度やり方教えろよ。手間が1つ省けそうだ」
「ええ、もちろん」
「んじゃ、片付けも終わったことだし呑みに行くか」
「うん」
白衣を脱ぎ、椅子に掛けた阿近。
死覇装だけを纏う阿近は新鮮で目を奪われた。
黒い死覇装は阿近の色白い肌をより強調させる。
「居酒屋で良いか?それとも静かな方が良いか?」
「阿近の好きな方で良いよ。特にどっちが嫌とかない。
誰かとお酒呑むの久しぶりだからすぐ酔っちゃうかもだけど」
「面倒くせぇ酔い方しなけりゃ良い。どっちでも良いなら居酒屋行くか」
「ええ」