第2章 初めまして、久しぶり
「阿近、そろそろ時間よ。起きられそう?」
「あと5分だけ……」
身体を揺らして起こすが眠気が勝つのか中々目を開けない。
スルリと腕から抜け出し、サッと身なりを整える。
本当……可愛い。
手櫛で自分の髪を梳かしているとコンコンと小さくノック音がした。
「阿近さ……」
ノック音とほぼ同時に扉が開かれる。
返事をする前に開けるなんて急用なのかな。
「しー……今寝てるところなの。
寝不足みたいだからこのまま寝かせてあげたいんだけど、急用ですか?」
局員と思われる男の子は珍しそうに目を丸くした。
「え、あの阿近さんが!?寝てる!?」
まるでお化けでも見たかのような驚きようだ。
そして声が大きい。
これでは私が声を潜めた意味がないのでは……。
「あ、すみません。
阿近さん、あんまり眠らないことで有名で……。
あと人の気配とかで起きるんで普段なら起きる筈で、僕が喋っても起きないなんて珍しくて」
よっぽど安心してるんですね、と笑う。
「急用ではないのでまた出直します」
「ん、分かった。起きたら伝えておくね」
そう言って男の子は去って行く。
「……誰だ……?」
「ごめん、結局起こしちゃったね」
身体を起こし、眠そうに大きく欠伸をする阿近。
すぐには頭が覚醒しないのか、ボーッと私の顔を見つめる。
背骨を丸めて座るその姿はまるで猫のようだ。
「誰だった?今の」
「ごめん、名前聞き忘れちゃった。前髪をちょんまげにした……」
「あぁ、壺府か。何か言ってたか?」
「急用じゃないから出直すって」
「そうか」
大きな欠伸をして、目に涙を貯める阿近。
「働きたくねぇな……」
「なら休んじゃえば良いんじゃない?」
そんな阿近が可愛くて髪を撫でる。
寝起き特有の掠れた低い声が色っぽい。
「中々そういう訳にもな。
千早は今日なんかあるのか?」
「任官式。多分そのあとに各隊を回るかも」
「そりゃまた忙しそうだな、頑張れよ」
「ええ、ありがとう」
「もう1回シャワー浴びてから研究すっかな」
「程々にね」
「大丈夫だ。
思ったより質の良い睡眠がとれたみてぇだから、あと2徹ぐらいはいける」
「ちょっとの時間でも軽く寝なさい!」
「なら千早が寝かせろよ。
お前が居ると、なんか眠れんだよ」