第13章 調査終了
「千早もダウンしちゃったし、そろそろお開きにする?」
松本の一言でその場はお開きになり、各々帰ったりその場で寝だしたりしている。
俺は膝の上で眠る千早を抱き上げ、奥の部屋に敷いてある布団まで運ぶ。
布団の上に寝かせると懐からシャランと小さな音が鳴った。
「そういや預かったままだったな」
こいつに似合うと思って買って来た簪。
現世では簪を身に付ける習慣がない為に任務中俺が預かっていた物。
やっぱりこれは俺が持っているより千早が持っていた方が良いな。
女に自分からプレゼントからを選ぶなんて、千早じゃなきゃやってねぇ。
「んんん……阿近、寝ないの?飲み足りない?」
眠そうに目を擦りながら身体を起こそうとする千早。
その身体には力が入っておらず、まさに形だけ。
本人も頭が回っていないのか両手を広げて抱っことせがむ。
「お前はもう寝ろ」
「阿近と一緒に寝るの」
「俺はまだやることがある」
「じゃあ私も寝ない」
「我儘言うな、眠いんだろ?散々言ってたもんな」
「……い、言ってない。眠くない!」
目を逸らしながらぎこちない言葉を紡ぐ千早。
こいつ、顔に似合わず嘘下手かよ。
「嘘吐くな。俺は良いから寝ろ」
「阿近と一緒に寝たいの。だめ?
仕事の邪魔はしないから、ギュッてして寝るだけ!阿近となら安心して寝れるの。
ね、お願い。阿近」
俺の手を握り、下から見上げて懇願する千早。
そういや普段千早に何かを頼まれることってねぇな。
「……仕方ねぇな」
「ほんと!?ありがと!阿近!」
ニパッという効果音がつきそうな程満面の笑みを浮かべて笑う千早。
本当、酔うと顔に出やすい。
そんな千早の隣に寝転がると腕を差し出した。
一瞬キョトンと目を丸くしたが、すぐに胸元に引っ付いて来る。
「痺れない?」
「そんなにヤワじゃねぇから心配すんな」
胸板にスリスリと鼻を擦り寄せ、幸せそうな顔をして目を瞑る。
……抱きてぇな。
俺の匂いを嗅いで安心した顔をしている千早にムラッと来るが、場所を思い出して留まる。
帰ったら抱くか。