第12章 調査 #2
市丸ギン。
護廷十三隊前三番隊隊長。
そして愛染と共に離反した隊長の1人。
私の居た時にはまだ入隊すらしていなかったから実力は全く分からないけど、護廷隊で隊長を務めていた男だ。
1秒足りとも気が抜けない。
最初から全力でいかなければ。
「やる気満々って顔やね。
嫌やなぁ、そない怖い顔せんとってや」
「無理に決まってるでしょう」
「まぁええわ、怪我だけじゃ済まんで?」
「そんなの百も承知よ」
「射殺せ神鎗」
「っ!ぐっ……!」
斬魄刀の峰で刀身を受けたけど押す力が強過ぎて止められない。
力ずくで後ろに弾き飛ばされる。
広めに張っていた筈の結界の端まで来てしまった。
もっと広く、強い結界を張らなければ。
神経を集中させて結界の範囲と強度を一気に上げる。
「流石は隊長はん、そない遠くまで結界張れるなんて大したもんや。
でも、ええの?」
「何がですか?」
「そんなことに霊圧使うてもうて」
「結界を張らなければ被害が拡大するだけでしょう?」
「強気やなぁ。嫌いやないで、そういう子」
一気に間合いを詰められ、素早い斬撃が繰り返される。
受けるのが精一杯で形成は一向に変わらない。
ここに来て斬術の不得意さを痛感させられるとは思わなかった。
加えて今は2対1だ、分が悪い。
「っ、つぅ……」
「痛がる顔もカワイイわね、千早。食べちゃいたい」
相手の刀を弾き、間合いを取ろうとするのにすかさず彼女が距離を詰めて来て思うように間合いが取れない。
近接戦闘は私の最も不得意とする分野だ。
以前の十一番隊のように力の差があれば問題ないけど、互角以上の相手ではそうもいかない。
ひとまず1対1に持ち込まなければ。
「あは、やっとわたし相手でもやる気になってくれた?
泣かし甲斐がありそ」
ニヤリと口元を大きく緩ませる彼女。
「縛道の六十一、六杖光牢」
「なに!?また鬼道!?でもムダよ、こんなの市丸がまた……え?
ちょっと、何突っ立ってんのよ!助けなさいよ!」
「なんでボクが助けなあかんの?」
「なんでじゃないわよ!良いから早くして!」
「自分の立場分かってないようやね?
よく聞き、愛染隊長がもう用済みやって言うとったで。
この意味分かる?」
「っ……そんな訳ない!愛染様がっ……」