第12章 調査 #2
あと残る問題は、どうやって例の彼女に怪しまれずに近付くかだよね。
霊圧を消して監視することも考えたけど、それでは潜入までした意味がないだろう。
実際に中に入らなければ分からないこともきっとある。
どうすべきか考えていると、近付いて来る彼女の霊圧に気を引き締めた。
「転校初日からサボり?大人しそうな顔して意外とワルなの?」
屋上に現れた女の子。
私達がXではないかと疑っている人物だ。
黒く長い髪と縁の丸い眼鏡がその顔を隠しているけど、間違いない、写真で見た彼女とそっくりだ。
当然と言えば当然だけど、入隊時の写真よりも髪がかなり伸びている。
眼鏡も写真では掛けていなかった気がするが……。
「えっと、そんなんじゃなくて……今お昼休憩だよね?」
「そうだけど、屋上は基本立ち入り禁止なのよ。知らなかった?」
知らなかった……。
自分の情報不足に頭が痛くなる。
でもまさか彼女の方から近付いて来てくれるとは思わなかった。
色々と近付く手段を考えてたけど、どうやらその手間が省けたようだ。
仲良くない人にタメ口で話すのはなんだか疲れる。
「その顔は知らなかったって顔ね。案外世間知らずなのかな?」
世間知らず。
その言葉が胸にチクリと刺さる。
やっぱり若者の場所に潜入なんて無理があったんじゃ……。
「ゴメンゴメン!ウソだから!そんな泣きそうな顔しないで。
……まぁ、その泣き顔すっごく唆るけど」
「えっと……」
反応に困って、適当に笑っておく。
阿近も前に同じようなこと言ってたけど、阿近に言われるのとは違って少し背筋が冷たくなるのを感じる。
なんだろう、この子。
ニコニコした表情の時もあれば、時々凄く射抜くような鋭い視線を見せる時もある。
「あぁ、ごめんね、自己紹介まだだったよね。
わたしはヤコ。同じクラスなの、よろしくね?」
「あ、私は……」
「千早でしょ?知ってる!自己紹介したじゃん!
ね、千早って呼んでも良い?ってもう呼んじゃってるか!」
「う、うん。もちろん」
私の手を取り、グイグイと話を進めるヤコと名乗る彼女。
初対面からこう距離をつめられるの、苦手だな……。
身体を引きたくなるのをグッと堪え、とりあえず笑っておく。