第11章 調査 #1
「ごめんね、急に引っ張って。怪我ない?」
「あぁ、問題ねぇ。助かった」
阿近から離れ、今のことを喜助くんに話す。
すると彼も苦い顔をして一言だけ、了解っスと呟いた。
皆地下室から引き上げ、上に戻ってもまだ暗い空気のままだ。
「私達が気を病んでどうするんですか。
私達に今出来ることは1つだけ、一刻も早くXを捕らえること。
その為にはしっかり休まないといざという時に動けませんよ?」
「確かに千早の言う通りだね、行こう一角」
「あんたやっぱタフだな。流石は隊長が認めるだけのことはある」
「千早も無理しちゃ駄目よ、あたしは基本織姫の家に居るから、何かあったら遠慮なく来なさい」
「ありがとうございます、乱菊さん」
「あ、やっと呼んでくれた!じゃあね」
3人を見送り、少し肩の力を抜く。
こうも分からないことが多いと迂闊に動けないのがもどかしい。
「修はどこに泊まんだ?」
「あ、俺は茶渡のとこに」
「阿近、私ちょっと出て来るね」
「は?こんな時間からどこ行くんだよ」
「うん、ちょっと」
「聞いちゃいねぇ……怪我すんなよ」
「うん」
なんとなく1人になりたくて、外に出た。
特に行く宛てなんてない。
適当に赴くままに自由に歩く。
Xはなんの目的があってこんなことをしているのだろうか。
なんの為に虚に変えているのだろうか。
ザワつく心を落ち着ける為に深い息をゆっくり吐き出した。
「私がしっかりして居なきゃ……」
目を瞑り、スゥッと神経を集中させて私が昼間に残した霊圧の印を探る。
全部で10箇所程残しただろうか。
その印には何も異常は見られない。
まぁそう頻繁には動かないよね、向こうも逃げている訳だし。
*****
ボーッとしていて気付かなかったけど、時計を見ると私が出て来てから2時間程過ぎていた。
そんなに経ってるとは思わなかった。
時間も時間なだけにソーッと音を立てないように浦原商店に戻ると、まだ部屋の明かりは点いていた。
「遅かったな」
「ごめんなさい。ちょっと考え事してたらいつの間にか時間が経ってて。
阿近はどう?順調?」