第11章 調査 #1
「その後千早に言われて僕達は次の場所へ急いだ。
千早の察知が早かったから、まだその場にXは居た」
「!本当ですか?」
「うん、奴の正体は女だったよ。
一瞬だったしフード被ってたから顔まではよく見えなかったけど、黒く長い髪で一護達と同じ学校の制服を着ていた」
長い黒髪。
喜助くんが見せてくれた彼女の入隊当時の写真と変わっていない。
「他に何か見たものはありませんでしたか?」
「……暗かったからぼんやりとだけど、何かを注射していたね」
「注射?自分にですか?」
「いや、そこに居た整(プラス)の魂魄に。
そのあとすぐさ、Xが去り魂魄が大量の虚を呼んだのは」
「虚を呼ぶ?」
「うーん、なんて言ったら1番近いかな……僕もこんなこと初めてで上手く言葉に出来ないんだけど。
虚化した魂魄が一際大きな声を出して、空から虚が大量に現れたんだ」
何かを注入されて虚になる、そんなこと聞いたことがない。
開きかけの穴を開けたりとかはあるけど、穴も広がっていない魂魄を一体どうやって。
なんだか胸騒ぎがするのはどうしてだろうか。
この場に流れる空気が嫌な感じがする。
「ほら、ちょうど千早が連れ帰って来たあの虚。
あいつがXに虚にされた魂魄だよ」
「!それを早く……!」
瞬歩で阿近の元へ走り、グイッと自分の元へ引き寄せた。
「っ、おい!」
「黙って。縛道の八十一、断空」
虚閃を出そうとしていた虚との間に障壁を作り、阿近と研究機材を護ると斬魄刀を始解した。
煙幕で視界の悪い中懐に入り込み、中心に刀を突き立てる。
出来るか分からないけど浄化させてあげたい。
安らかに尸魂界に行けるように。
刀身が黒く染まり、林檎のような香りが強くなっていく。
刀を引き抜くとボロボロと虚の仮面が崩れ、元の魂魄の姿に戻る。
「良かったのか?せっかくの研究体」
「うん、問題ない。
元々虚にされた魂魄には時間経過で大爆発を起こすようになっていたわ」
「じゃあ今の」
「うん、このまま放置していたら無傷じゃ済まなかったかも。
阿近も、皆も」
実際に斬魄刀で触れて分かったこと。
“何か” を注入されて無理矢理虚にされ、その上時間が来ると爆発して死ぬ仕組みになっていたこと。
なんて酷いことをするのだろうか。