第11章 調査 #1
「中々探すの苦労したんスよ、これ見てください」
喜助くんが懐から取り出したのは1枚の紙。
護廷十三隊の隊士名簿のコピーだと思われるそれには、1人の人物のページだった。
その所属欄には十二番隊と記載されているが、当然見覚えがある筈がない。
「アタシは今回の犯人、Xだと思ってるっス」
「!」
「どうです?阿近サン、見覚えないっスか?」
「いや……」
珍しく歯切れの悪い言い方をする阿近。
古い記憶を辿っているのだろうか、眉間に寄せられた皺は深い。
「でもXの正体は男か女か分からないって」
「はい、確かにそう言いました。
これは彼女の護廷十三隊入隊当時の写真です」
「えっと、つまり……?」
喜助くんの言っている意味が分からなくて。
いや、意味は分かるけどその真意が分からなくて阿近に助けを求める。
短く溜め息を吐きながら阿近が説明してくれた。
「十二番隊、まぁ技術開発局に居る連中は大半が局長によって改造されてる奴が多い。
下っ端なら尚更研究材料にされやすい。
だから入隊当時の写真と今の状態が一致してるかは分からねぇってことだ」
「なるほど、そういうことね」
でもどうして彼女がXなのか。
そしてその正体を知りながらなぜ泳がせているのだろうか。
謎は深まるばかりだ。
「……証拠がないんス。
彼女をXだと決めつける決定的な証拠が。証拠がなければどうすることも出来ない」
「でもどうしてこの子が怪しいと思ったんです?何か気にかかることがあったから怪しいと踏んでるんですよね?」
「なぁんにも」
「へ?」
大袈裟に手を振る喜助くんに、思わず気の抜けたような声が漏れてしまった。
話の内容的にとてもご飯を食べていられる気分ではなく、自然と箸が止まる。
「お恥ずかしながら、なんにもないんス。
彼女が怪しいと思う理由も、何も。ただのアタシの勘です」
「勘?」
「ハイ!
あの1件以降アタシは現世任務をする護廷隊士御用達のお店になりました。
そこに現れた死神で、なんとなくヤな予感がした死神が彼女なんス。
現に彼女が来てから例の虚大量発生が始まった」
これは昼間に砕蜂サンに頼んで探して貰ったものっス。
何せ1回見たきりなので顔がうろ覚えで、かなり苦労しました。
そう話す喜助くんは真剣な表情をしている。