第11章 調査 #1
「……ないです。
私のような負傷者は例外としても、健康な隊士が自分の意思で護廷十三隊を離れることは出来ません。
まぁあくまでやむを得ない場合を除きますが」
「そうですよね、確か」
「凄く後味が悪くて言いたくなかったのですが……副官であった女の子は虚討伐の任務の際に殉職しました。
交際相手だった男は彼女の死を知り、自害しました」
改めて口にすると、凄くやるせない出来事だったと痛感する。
隊長格と言っても普通の男女。
恋だってしたかっただろう。
あんなに憔悴してしまうまで、批判する必要があったのだろうか。
その批判さえなければ今頃彼らは籍をいれて幸せに暮らしていたのではないか。
起きてしまったことはもうどうにもならない。
過去には戻れない。
「……すみません」
「檜佐木副隊長が謝ることじゃありませんよ。
その後暗黙の了解として隊長格、まぁ主に隊長のみですが自身の恋愛をあまり表に出してはいけない、となったのです。
恋愛も結婚も自由ではありますが、あくまでもひっそりと」
「俺は応援してます、お2人のこと!」
「ふふ、ありがとうございます。檜佐木副隊長」
この人は根から凄く優しい人だ。
他の子達からは、顔の傷が少し怖く見られてしまっているみたいだけど話してみるととても優しくて、強い。
自分をはっきり持っている人。
「あ、俺のこと全然呼び捨てにしてくれて良いっすからね?言いにくくないっすか?」
「ありがとうございます。ではお言葉に甘えて檜佐木くんって呼びますね。
私のことも自由に呼んで頂いて大丈夫ですよ」
「はい、では千早さん……でも良いですか?」
「ええ、もちろん。好きなように呼んでください」
なんだか少しだけ距離が縮まった気がする。
檜佐木くんは阿近が名前で呼ぶ、数少ない人。
きっと私の知らない阿近の一面も知ってるだろう。
「じゃあ私はここから分かれますね。今日中に街を1周したいので」
「今日中にって……え!?」
瞬歩を使って、街を端から端まで探索する。
地図で見た感じこの街は意外と大きい。
いつどこで何が起こっても迅速に対処出来るように地形を把握しておきたい。