第11章 調査 #1
「あの、神咲隊長。
こういうこと俺から言うのは非常に言いづらいんすけど、調査だったら俺らがやりますよ?」
私が向かいたい方向とたまたま同じだった檜佐木副隊長が遠慮がちに口を開く。
今の私は義骸に入っていないから、義骸に入っている檜佐木副隊長は周りから見えても私の姿は周りから見えない。
今は人通りがないから良いけど、そこも気をつけなきゃ。
「ううん、良いんです。
私も明日からの調査の前に調べておきたいことがあって」
「そうなんすね」
「阿近とのこと、黙っててくれてありがとうございます」
「いや、お2人が黙ってるなら俺が言うべきじゃないっすから。
なんで言わなかったんすか?そんなに隠すようなことじゃないですよね」
そうか、檜佐木副隊長は若いから当時のことは知らないのか。
自分との年齢差を改めて痛感させられた気がする。
「檜佐木副隊長が入隊するずっと前にね、凄く大きな問題になったことがあったんです。
当時隊長格同士で交際している人が居て、もちろん2人は公私を分けていて仕事に私情は一切持ち込んでいなかったのだけど。
2人を深く知らない人から見れば、よく思わない人も少なからず出て来る。
隊長は何100と居る隊士の命や責任を背負っているし、副官はそれに準ずる責任がある。
実力じゃなくて贔屓して副官を選出したとか、2人が任務を放棄して逢い引きしているとか。
それこそ、公務に支障が出る程批判が多く集まってしまった」
当時のことを思い出し、チクチクと胸が痛む。
日に日に増していく批判と比例して、どんどん焦燥していく2人の姿は見ていられなかった。
「しばらくして2人は別れてしまったのだけど、それでも尚誹謗中傷は止まなかった」
「それで、どうなったんすか……?」
「最終的には総隊長が隊士全員に向けて喝を入れて収束したのだけれど、その後すぐに2人は護廷隊から離れてしまったの」
「あれ、隊士って自分の意思で隊を離れること出来ましたっけ?」
その疑問は最もだ。
最初の内は隊士自らの意思による “脱退” という制度があると思っている隊士がほとんどだ。
でも実際護廷十三隊にはそんな制度は存在しない。