第10章 特例任務
「だって2人が千早を見る目が違うんだもん!
あの温和で優しい浮竹隊長が千早にだけ怒ったり、基本社交辞令しか言わない京楽隊長が飲みに誘ったり!」
グッと距離を詰める乱菊副隊長に困って阿近をチラリと見たけど、素知らぬ顔で何やら伝令神機を操作していた。
付き合ってることを隠すにしても、少しぐらい興味持ってくれても良いのに。
「どちらとも付き合ってないですよ」
「ウソー」
「本当です!
お2人は私が統学院時代の先輩で何かと私のことを気にかけてくれているだけです」
「なぁんだ、そうなの。てっきり三角関係なのかと思ってたわ」
乱菊副隊長の言葉に少し頬が引き攣る。
こういう話題程、返しに困るものはない。
どう答えれば相手の尊厳を傷つけることなく否定することが出来るのか。
「あんた好きな男居ないの?あ、ひょっとして夫持ち?」
「乱菊さん、流石に隊長相手にグイグイいき過ぎなんじゃ。それに呼び捨て……」
「何よ、修兵。千早が良いって言ってんだから良いじゃない。
口煩い男はモテないわよ」
助け舟を出してくれたであろう檜佐木副隊長が流れ弾を食らう。
その間に阿近は掛かって来た電話に出る為、外に行ってしまった。
「っていうか、なんであたしだけに注意するの?
千早と距離感近いのはあたしだけじゃないでしょ。
阿近とか弓親とか!
あの2人だって呼び捨てよ?その上隊長格でもないし」
「まぁまぁ、一旦落ち着きましょう?
阿近には私が好きに話してって言ったんです。
まだ隊長に復帰する前で義眼を造って貰った時に。
弓親さんも同じで隊長に復帰する前に会ってるので多分そのまま。
時と場合にもよりますけど、言葉遣いなんて相手が不快な気持ちにならなければ自由で良いと思いますよ」
私はタメ口とか敬語とか、特に拘りはない。
呼びたいように呼べば良いと思うし、それを誰かに強制するつもりもない。
「ほーら見なさい!
本人が良いって言ってんだから、良いのよ」
「まぁ、場面や相手にもよると思うのですが私は気にしないので。
私がそうだからと言って、他の人も同じ考えって訳ではないですし」