第10章 特例任務
「まぁね、それは分かってるけど。
てか千早ってどんな男がタイプなの?」
「タイプ……ですか?」
「そう、ちょっとぐらいあるでしょ?」
「そう言う乱菊副隊長はどうなんですか?」
好みなんて今まで考えたことがなかった。
あまり人を好きになる機会なんて多くなかったし、それに今は阿近が居る。
阿近のことしか考えられない。
返事に困って乱菊副隊長に話題を返す。
「あたし?あたしはそうねぇ〜、格好良い人が良いわ。
顔が大事よね、やっぱり。
それから収入もそこそこ欲しいし、背もあたしより高い人が良いわね。
あと何よりあたしより弱い人はイヤ」
思ったよりもスラスラと出て来る答えに若干困惑していると、喜助くんが何やら大きな荷物を持って部屋に戻って来た。
「随分楽しそうな話をしてるんスね〜、アタシも混ぜて欲しいっス」
「何を持ってるんですか?」
またこの話が膨らんでしまいそうだったので、それとなく話を別の方向に逸らす。
「あ、これっスか?
これは明日から千早サンが着る制服です」
「へぇ、今の制服ってこんなにお洒落なんですね」
「明日から頼みますよ」
「はい。頑張ります」
話が一段落した頃、阿近が戻って来た。
その表情はいつになく険しい。
「阿近?何かあったの?」
「いや、なんでもねぇ」
「そう?なら良いけど、なにかあったら遠慮なく言ってね。
皆さんもそろそろ調査に戻りましょうか。
私も少し出ます」
「千早が言うんじゃ、しょうがないわね」
*****
険しい表情のままの阿近が少し気になったけど、本人がなんでもないと言うなら言ってくれるまで待つしかない。
言いたくないタイミングもあるだろう。
私は義骸を着ずにそのまま外に出る。
本当は夜間に動きたかったけど、動くのは早い方が良いだろう。
「千早、その簪可愛いね。似合ってるよ」
「あ、ありがとうございます。弓親さん」
「怪我だけは気を付けてね」
ヒラヒラと手を振る弓親さん。
女の私から見ても綺麗な弓親さんに褒められるとなんだか嬉しくなる。