第10章 特例任務
浦原商店に入ると、一通りの散策を終えた皆が揃って座っていた。
調査報告の時間は午後3時と決めたらしい。
そんなの私は一言も聞いていないけど、潜入任務ならば時間なんて関係ないか。
「千早サン、潜入は明日からです。準備はいかがっスか?」
「問題ないです」
「さっすが、そう言ってくれると思ってました〜!
阿近サンは必要な機材あります?なんなら経費で買いましょうか?」
「誰の経費を使う気すか」
「それはもちろん阿近サンの」
その言葉に阿近は返事をせず、大きな溜め息を吐いた。
一線は引いて接してるけど、確かに信頼しているようだ。
2人のやり取りを少し微笑ましく思いながら、他の3人の報告を聞く。
皆異常なしだ。
本来ならばそれに越したことはないけど、何も起こらなければ解決は出来ない。
今から1時間の休憩を挟んで、また調査に戻るらしい。
「今のところですが、Xは日中にしか動きません。
なので夜間は各自身体を休めてくださいっス」
益々謎は深まるばかりだ。
普通動きやすいのは夜間だろう。
人の目も疎らになり、活動しやすい筈だ。
現に虚も日中よりも夜間の方が多く出現する。
まぁ、彼らはそんなこと全く考えていないのだけども。
「……なんだか変ね」
「ええ、そうなんスよ。普通の人とはまるで行動パターンが反対で」
皆雨ちゃんが煎れてくれたお茶を飲み、休憩しているのだけど調査のことが頭の片隅にあるのか、空気は重い。
これでは全然身体が休まらないだろう。
なんとか空気を変えなければ、そう思っていると不意に乱菊副隊長が立ち上がり私の目の前に座った。
「ね、千早。そういえばずっと気になってたことがあるんだけど、聞いても良い?」
「?もちろん」
「京楽隊長と浮竹隊長、どっちが本命?」
「へ……?」
「「ぶっ……!」」
乱菊副隊長の言葉に思考が停止する。
檜佐木副隊長や、斑目三席に至っては飲んでいたお茶を吹き出してしまっている。
「性格的には浮竹隊長よね?浮気しなさそうだし!
ねね、どっち?」
「えっと……なんでその2人……?」