第1章 引退、そして始まり
翌日からは一番隊隊舎に出向き、鍛錬場を貸して貰う。
総隊長が自ら稽古をつけてくれていたのだが、妙に張り切っていたのは言うまでもないだろう。
毎日朝から晩まで稽古、稽古、稽古の荒治療。
お陰で2日経つ頃には全盛期の動きを取り戻していた。
「目は明日出来るんじゃろ?
明日復帰で良いかの?」
「随分と急ぐんですね」
「今の護廷十三隊には空席が3つあるからの。
そこは付け入りやすい大きな隙じゃ。
隙は早めに潰す必要がある」
普段の総隊長なら義眼に慣れるまで少し時間を空けてくれた筈だ。
それがないということは、それだけ切羽詰まった状況なのだろう。
隊長職をこなしていく中で義眼に慣れていくしかない。
暫くは激しい戦闘がないことを祈ろう。
「改めて状況を説明しておくぞ、千早」
「はい」
鍛錬の片付けをしながら総隊長が口を開く。
「愛染、市丸、東仙が尸魂界を裏切り、四十六室も暗殺され、現在全ての決定権は儂にある。
護廷十三隊は三隊長が空席という未だかつてない状況じゃ。
それに加えて五番隊、雛森は肉体、精神共に傷ついており療養中。
とても副官としての責務を果たせる状況ではない」
「雛森?」
話の腰を折られた総隊長は少し不服そうな顔で続けた。
「五番隊……今回の主犯愛染の居た隊の副隊長じゃ。
現在五番隊は、十番隊の日番谷隊長が牽引しておる。
三番、九番隊は共に副隊長が隊長職を兼任している」
……それはかなり負担が大きそうだ。
「ということは私は五番隊の隊長を務めれば良いのですか?」
単純に考えて、五番隊が1番危機的状況だろう。
隊長不在、副隊長は療養中。
日番谷隊長が牽引しているとはいえ、彼には自隊の仕事もあるだろう。
かなり負荷が掛かっていることに変わりはない。
日番谷隊長には会ったことがないけど話を聞く限り相当仕事面で苦労していそうだ。
「……いや、それも考えたんじゃが……」
「じゃあ三か九?」
消去法で残りの2つを上げるも、総隊長は首を横に振るばかり。
他に空席の隊は存在しない。
他の隊長を空席の隊に異動させるのも、あまり得策ではないだろう。
「儂は新たに隊を作ろうと考えておる。
お主にはその隊長を務めて貰う」
「新しい隊!?」