第1章 引退、そして始まり
「ちょっと、大丈夫?」
「あ、すみません。
少し休めば……なんとかなると思います」
綾瀬川さんが、倒れた私の顔を覗き込む。
「四番隊連れて来るからちょっとだけ待ってて」
そう言うと瞬歩で消えた。
少し経てば自分の回道で治癒出来るし気にしなくても良いのに。
しばらくして綾瀬川さんが戻って来る。
その後ろには怯えた様子の男の子が立っていた。
「わぁ!?
更木隊長!?大丈夫ですかぁ!?」
「違う、そっちじゃなくてこっち」
ワタワタと慌てる姿はなんか可愛くて憎めない。
そんな彼を私の前まで引っ張る。
*****
四番隊の人に怪我を治して貰ってからしばらく経ち。
ようやく動いても良い、と綾瀬川さんから許可が降りた。
綾瀬川さんは優しいのか、心配性なのか、もう問題ないと話す私の言葉は一切受け入れて貰えなかった。
「ご迷惑をお掛けしました」
もう明日は一番隊の鍛錬場に行きます、と心に誓う。
十一番隊に居たら勘を取り戻す前に出血多量で復帰どころではありません。
「別に、言う程迷惑じゃないし。
あと君、隊長の剣を何回も受け止めるなんて何者?所属は?」
ジト……と睨まれる。
「あ!すみません、挨拶が遅れました。私は神咲千早と言います。
今度護廷隊の隊長を務めさせて貰う者です」
「あぁ、君が。今凄く噂になってるよ。
僕は綾瀬川弓親、十一番隊の五席。
まぁ、何かあったら声掛けてよ」
「ありがとうございます」
十一番隊にもこんなに優しい人が居たなんて……!
と少し感動する。
「あたし、草鹿やちる。十一番隊の副隊長なの」
ニコニコと笑うピンク髪の可愛らしい女の子。
この子、副隊長だったのか……なら私が気にかける必要もなかったかな。
可愛い、と頭を撫でるとパァッと笑顔になった。
「じゃ、面倒だから隊長が起きる前に帰りなよ」
「そうします、ありがとうございました」
「ばいばーい、また遊びに来てね〜、ちぃちゃん!」
深々と頭を下げて、十一番隊の鍛錬場をあとにする。