第10章 特例任務
「今回の1件、アタシは愛染も1枚噛んでいると睨んでます。
もちろん他の皆さんも考えることでしょう。
綾瀬川サンがXを見た現場には微かにですが、残った霊圧があった。
それを解析し今回の疑惑の人物を導き出すことが出来た」
「それの何が?」
「その霊圧は死神の霊圧でした。
でも霊圧がかなり変な濁り方をしているんス」
「死神?あんたさっき人間って言ったじゃないすか」
「そうっス。あの場ではああ言った方がスムーズに阿近サンと2人になれると思って。
濁り方が変なので純粋な死神ではないと思うんスよ、確証はありませんが。
詳しくは調べてみないことには分かりません。
ですが不用意に情報を与えて現場の皆さんを混乱させるのは良くないと思って黙ってました。
阿近サンならアタシの言いたいこと、分かるっスよね?」
確かにこの人の言わんとしていることは分かる。
霊圧の濁った死神など存在しねぇ。
濁ってる奴は大抵は何か普通と違うものを持っている。
例の旅禍の人間のように特異な能力を保持している場合もあるが、基本そういう奴の霊圧を濁らねぇ。
「あ、そうそう。もう入って来ても良いっスよ〜。千早サン」
「本当に大丈夫ですか……?」
戸を少しだけ開け、顔を覗かせる千早。
何をそんなに怯えてんだよ、こいつは。
*****
虚を退治して浦原商店に戻ると、中から喜助くんの声が聞こえた。
そっか、まだ説明の途中か。
1人納得して戸に手を掛けると、阿近の声も聞こえて来た。
阿近が皆の前で喋るなんて珍しい。
「戦力の分散なんて言っても人避けしただけですよね」
「相変わらずの深読みっスね、でもアタリっス。
涅サンのことだから局員を1人って言ったら阿近サンを選ぶか、人選を阿近サンに丸投げするかのどちらかだと踏んだんスよ」
「アンタが俺に話したいことってなんすか」
……これは何やら大事そうな話だ。
そして私が口を挟んで良いのかも分からない。
戸から手を離し、2人の話が落ち着くのを待っていると不意に中から声を掛けられ、驚いてしまった。
「大丈夫っスよん。ね?阿近サン」
「……あぁ」
「ほんと?なら良かった。皆は?」
「東西南北に分かれて調査に行った」
「阿近は調査行かないの?」
「阿近サンはここでアタシと2人でデータ採集と解析っス」