第10章 特例任務
「なるほど……まぁ、理解は出来ますね」
自分で言いたくはないけど、私の見た目は強そうには見えない。
就任したばかりの頃も、羽織を着ていなければ周りから舐めた目で見られていた。
数で押せば倒せると思われていた時期もあっただろう。
「千早サンならそう言ってくれるだろうと思って、実はもう編入手続きは済ませてあるんス」
「また勝手に……」
「行動に移すのは早い方が良いんスよん。
黒崎サン達には事前に話を通してあります、何かあったら力になってくれるでしょう」
喜助くんがそこで言葉を区切ると、タイミング悪く伝令神機が虚の発生を告げる。
「私が行きます」
「!神咲隊長のお手を患わせる訳には!ここは俺が行きます」
「ありがとうございます、檜佐木副隊長。
でもここは私で良いのです。
私にその潜入を振るということは他の人達にもそれぞれ振りたい仕事があるのでしょう?」
「さっすが、お見通しで」
「皆さんはこのまま喜助くんと話を続けてください。すぐに戻ります」
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「折角お気遣い頂いたので本題に入りましょうか。
千早サンは戦力の分散を避けると言いましたが、今回は分散させていきましょう。
Xが次いつどこに現れるか分からない。
2人1組では警護出来る範囲が限られる。
千早サンは学校、阿近サンはここでデータ採集を、他の皆さんは東西南北に分かれて調査をお願いします」
その言葉に各々席を立ち、調査に向かう。
そして残されたのは俺だけ。
データ採集ってここで何が出来んだよ、道具もデータもねぇのに。
と、胡散臭い笑顔を浮かべる元局長を睨む。
「まぁまぁ、そんなに怪訝そうな顔しないでくださいよ〜」
「戦力の分散なんて言っても人避けしただけですよね」
「相変わらずの深読みっスね、でもアタリっス。
涅サンのことだから局員を1人って言ったら阿近サンを選ぶか、人選を阿近サンに丸投げするかのどちらかだと踏んだんスよ」
「アンタが俺に話したいことってなんすか」
ろくでもないような気がしてならない。
この人は昔から変なことしか考えない。
それでも不用意に周りを巻き込むことはなかったけど、今回もそうだとは限らない。