第10章 特例任務
「……1つ聞いても良いですか?」
「どうぞ」
「そのXはどうやって虚を発生させているのか、そしてそれを従わせているのか。
現時点で何か分かっていることはありますか?」
「残念ながら……。
現状アタシが把握出来ているのは、Xがなんらかの力を用いて虚を生み出しているということだけっス」
「生み出す?」
「はい。これは前回綾瀬川サンがチラッと見ただけなので確証はありませんが、Xが現世のプラスの霊に “何か” をして、そいつが虚になったと」
「何かをして、か」
「この手のことなら千早サンの方が詳しいですよね?
だから適任だと進言したんス。
それにあなたの斬魄刀の力なら、万が一敵が大人数になったとしても一瞬で叩き潰せる」
喜助くんの目がギラリと光る。
これはまた何かよからぬことを考えている時の顔だろう。
二番隊に居た頃から変わらない。
情報を即座に分析する力、そしてそれに適応する力。
臨機応変とはまさに彼のような人のことを言うのだろう。
「……買い被りですよ。
私の卍解はそんなに便利なものじゃないです」
「ご冗談を〜。
単純な殺傷能力だけで言えばこの場に居る誰よりも高いじゃないっスか」
確かに喜助くんの言う通り私の斬魄刀の殺傷能力は群を抜いて高いだろう。
それも一対一よりも他対一の方がより力を発揮する。
でも反対に言えば、複数対複数の戦いには不向きと言える。
私の斬魄刀の能力は見境がない、敵味方関係なくその能力を発揮してしまう。
故に私がひとたび卍解すれば周囲に居る人間は誰も助からない。
「相変わらずデリカシーのない男じゃの、喜助。
千早は昔からその話をする度に嫌な顔をしておったと言うに」
「あだっ」
「夜一さん」
「すまんの、千早。こやつはまるで成長してなくて」
スッと奥の襖が開かれたかと思うと、ゴチンと大きな音がして喜助くんの頭の上に拳が振り下ろされていた。
こんなこと言ったら凄く失礼だけど、夜一さんデリカシーって言葉知ってたんだ……。
なんて目を向けていると、それを悟られたのか私にも手が伸びて来た。
「お主も生意気な目をしておるの。儂がデリカシーを知っていたらおかしいのか?ん?」
コショコショとお腹を擽られ、思わず声が出てしまった。
擽ったい!