第10章 特例任務
時刻は正午になる5分程前。
現世へと通じる穿界門の前には千早をはじめとする、今回の任につく隊長格3名が揃っていた。
「ったく、十二番隊遅いわね。てか一体誰を寄越すのかしら」
「さぁ。十二番隊だけは全く予想がつかないっすからね」
「乱菊副隊長、檜佐木副隊長。今回はよろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします!」
「よろしく〜」
2人と挨拶を交わしていると、不意に見知った霊圧が近付いて来るのが分かった。
ここは隊舎からも離れている筈。
「よう。揃ってるみてぇだな」
「阿近?お見送り?」
数人の隊士と共に現れた阿近は凄く大荷物だった。
持っているのは主に阿近の後ろに居る人達だけど。
「阿呆。俺も行くんだよ」
「行く?どこに?」
「現世。局長に今言われたもんでな、全員分の義骸準備すんのに手間取った」
「阿近のその荷物って」
「お前らの義骸。流石に1人じゃ持てねぇからな、暇してる奴らに運ばせた」
頭が混乱する。
確かに技術開発局から1名派遣するとは言ってたけど、まさかそれが阿近だったなんて。
阿近が抜けて技術開発局は大丈夫なの?
「なぁんだ、阿近なら安心ね。
他のよく知らない連中が来たらどうしようかと思ってたわ」
「技局員なんて大半は局長に改造されてるからな。
現世に行ける見た目の奴なんて限られてんだよ。
まぁ義骸に入らなきゃ良い話だがな」
乱菊副隊長の言葉に阿近が返答をしていると、ちょうど正午になり、穿界門が開かれた。
それぞれ自分の義骸を受け取り、地獄蝶を1人1匹つけその門をくぐる。
穿界門をくぐると左胸にチリ……と小さな痛みが走る。
これは限定霊印を打ち込まれた痛みだ。
この力を抑え込まれるような感覚は不快だ。
何度経験しても慣れることはない。
「阿近さんて現世行くことあるんすか?つか行ったことあります?」
「基本現世には行かねぇ。
局長に無理矢理連れられて2、3度ぐらいは行ったが……ここ最近はねぇな」
「千早も大変ね、こう何度も現世に駆り出されて。
隊長から聞いたわ、前回の任務で無理して浮竹隊長に怒られたんですって?」
「あはは、その話は内緒に……」
その件についてはあまり良い思い出がない。
浮竹さんや京楽さんだけでなく阿近にまで怒られているのだ。
蒸し返さないで欲しかった。