第10章 特例任務
「出立は本日正午じゃ。遅れは許さん。
現世に向かい次第、向こうに居る斑目、綾瀬川と合流せよ。
以上じゃ、解散!」
「総隊長、1つ宜しいですか?」
「なんじゃ、千早。言うてみぃ」
皆が隊首室から出て行くのを尻目に総隊長の元へ向かった。
「不服という訳ではないのですが、なぜ私なのでしょうか?
そしてここまで隊長格を派遣する意味があるのでしょうか?」
「確かに現状起きておることだけで言えば隊長格3名の派遣は些か大袈裟かもしれんの。
お主の言うことにも一理ある。
じゃが今回の件儂はどうも胸騒ぎがする。念を入れておくに越したことはない」
胸騒ぎ。
あの総隊長の口から出た言葉とは思えず、一瞬思考が停止してしまった。
どんな物事も力でねじ伏せて来た総隊長が警戒するナニカ。
私も気を引き締めなければいけないな。
「してお主を派遣する理由じゃが、総合的な判断とでも言うておこうかの。
話は終いじゃ。早う準備に取り掛かれ」
「……はい」
それ以上聞いてくれるな、と言われているようだった。
私を選んだのには何か他に理由があるのだろう。
しかしそれを私に言わないのは総隊長の中で考えがあるから。
総隊長が言わないのなら私はそれにただ従うしかない。
「ごめんよ、千早ちゃん。復帰したばかりでこんな大仕事」
「俺達も色々と考えたんだが、千早が1番適任だったんだ」
「大丈夫よ。京楽さん、浮竹さん。
不満な訳じゃないの、ただ少し気になっただけ」
「気をつけて行って来るんだよ、千早ちゃん」
「うん、ありがとう。
私が現世に行ってる間十四番隊と、織羽のこと頼んでも良いかな?
着任したばかりで分からないことも多いと思うから、何かあったらフォローしてあげて欲しい」
「もちろんだよ、千早。尸魂界のことは任せなさい」
またしばらく阿近に会えなくなってしまうのか、と小さく息を吐いた。
その千早の表情の陰りに気が付いたのは2人の関係を知るただ1人だけ。