第1章 引退、そして始まり
「どうした、千早!
お前はそんなもんか!?もっと俺を楽しませろよ」
チラリと視線を落とせば、腹部がパックリ斬られていてドクドクと出血している。
幹部は熱を持ち、心臓が脈打つ音が大きく聞こえる気がする。
これは早めに止血しないとまずそうかな。
更木さんの斬魄刀は切れ味はそこまで良くはないけど、刃こぼれがあり通常の斬魄刀よりも複雑な傷を与えるだろう。
「弱くなったな!」
上から全力で刀を振る更木さんに、気が長い方ではない私は苛立つ。
こちらの話を聞きもしないで一方的に……!
「何年のブランクがあると思ってるんですか……!
あと話ぐらい聞いてください!
こんなところで斬魄刀なんて使ったら鍛錬場が無事じゃ済まないでしょう!?」
その刀を弾き飛ばすように下から剣を振った。
更木さんの剣と私の剣がぶつかり、衝撃波を生み、互いの身体を吹き飛ばす。
「っは……」
飛ばされた身体は壁に打ちつけられ、力なく床に座り込んだ。
背中が痛い……。
「やりゃあ出来んじゃねーか」
楽しそうに笑い、首をコキコキと鳴らすと斬魄刀を握り直す。
待って、もう本当に今は無理。
これ以上は動けないと身体が悲鳴を上げている。
更木さんが動き出す前に自身の霊圧を解放し、瞬歩を用いて更木さんの目の前に移動すると、その顔の前に右手をかざした。
手から光が放たれ、少しと待たぬ間に更木さんの身体は後ろに崩れ落ちた。
良かった、鬼道が衰えてなくて。
「剣ちゃん!」
「すみません、これ以上はお相手出来ないので、鬼道を使わせて貰いました。
少し意識を飛ばすだけなので直に起きると思います」
そう言い終えると、力なく後ろに倒れ込んだ。
お腹の出血が何気に多い。
ブランク明けに更木さんとは中々厳しいな、と笑う。
しかし自分で言うのも変だけど、よく動けた方だと思っている。