第9章 本格始動
「この状況で緊張しない方が変ですってば!
僕ここに来るの引退して以来ですよ、200年は確実に空いてます!
そもそも死覇装の着方ってこれで合ってますか?副官証って左腕で良いんですよね?
って何を笑っていらっしゃるんですか!僕は真剣に……!」
織羽は昔からテンパるとよく喋る。
緊張でも、焦りでも、心拍数の上がり度合いに応じて口が回る。
変わってない癖に小さく笑みを零すと、目敏く見つけられて指摘された。
緊張しててもよく周りを見ている。
「ごめんね、織羽が変わってなくて安心しちゃって」
「変わってないって相変わらずお子様だって言ってます!?
言っときますけど僕はこの200年でそれなりに経験を積んで……まぁ顔はまだちょっとだけ幼いですけど、でも成長してます!」
身振り手振りを交えながら真剣に話す織羽。
艶のある黒髪は前に会った時よりもスッキリしていて、顎下ぐらいまで短くなっていた。
パッチリとした二重と大きな瞳は織羽のチャームポイントだ。
「大丈夫よ。織羽の隣には私が居る、安心して。ほら笑顔笑顔」
肩を軽くポンポンと叩き、両手の人差し指で織羽の口角を無理矢理釣り上げる。
人間も死神も、一生懸命やっていれば大抵のことはなんとかなる。
一生懸命な人を理由もなく嫌う人なんか居ない。
「またそうやって千早様は……!」
「ん?」
「いえ、なんでもありません。ありがとうございます、落ち着きました」
「じゃあ行こっか。皆待ってる」
「はい!」
その後滞りなく副官の紹介が終わり、織羽は私の隣で小さく息を吐いていた。
久々の瀞霊廷でその上この面子の前は緊張するよね。
今回浮竹さんは体調不良で欠席だけど、ここにいる全員が自分よりも目上だ。
誰だって最初は緊張するだろう。
お疲れ様の意味を込めて背中を軽くトントンと叩いた。
「以上で隊首会を終わる。解散!」
隊首会が行われるのは毎月第一月曜日。
隊長の任官式があったり、緊急事案があったりで増えたりするけど、基本的に月に一回は必ず開かれる。