【場地圭介】ペットショップの店員にパンツ見られました
第9章 私と圭介と不協和音と
なんですって? 誰が! 誰に! 嫉妬ですって!?
他の女を好きになって振られた私がキレる理由はあれど、振った彰人にキレられる理由なんか毛頭ない!
ふつふつと沸き上がる怒りを押さえ込むことができず、厳しい目付きで彰人を睨みつける。ほんの一瞬だったけど……彼が肩を揺らして後ずさったのを見逃さなかった私は、一気に距離を詰めてその胸ぐらを乱暴に掴み上げる。
なんでこう私の虫の居所が悪いときに限って、変なやつらばっかり出てくるわけ? なんなの? 私のサウンドバックにでもなりたいの? いい加減にしないと──。
「ブッ飛ばすわよ」
「──は?」
「誰が誰に嫉妬ですって? そもそもあなたに未練なんかこれっぽっちもないんだから、私が菅野さんに嫉妬なんてするわけないでしょ。調子乗ってんじゃないわよ」
早口で捲し立てると彼の癪に触ったのか、ギリリと歯を食いしばる音が聞こえてきた。私はもうアンタと付き合ってたときのような、可愛らしくていい子ちゃんの私じゃないんだから。
彰人に好かれていたいからってアンタに合わせて、頑張っていた私はもういないのよ。
「お前もあのロン毛と一緒にいるようになってから人が変わったよな!」
「今は圭介のこと関係ないでしょ」
「あんな頭悪そうな男と一緒にいるから、まで女としてのレベルが落ちるんだよ」
「勝手に彰人の基準で私を計らないで。それに今の私が本当の私なの。アンタと付き合っていたときは彰人の好みに合わせていただけよ」
勘違いしないで、と吐き捨てながら掴んでいた手も離す。怒りからか、恥ずかしさからか、顔を赤らめた彼は肩を震わせながら私を見下ろしてくる。
「自分のこと過大評価しすぎなんじゃない? 私が今でも彰人を愛してるとでも思っていたの? バッカみたい」
「はっ、馬鹿はどっちだよ」
「なんですって?」
「あんな独占欲丸出しの男、付き合っていても疲れるだけだろ」
圭介のことを小馬鹿にしたような彰人の言葉遣いに、眉根を寄せる。なんでアンタみたいなやつなんかに、圭介がそんなこと言われなきゃならないのよ。
「会う度に俺のこと威嚇してきてさ、やることが幼稚すぎるし──」
「……言わないで」
「ん?」
「それ以上圭介のこと──悪く言わないで」