【場地圭介】ペットショップの店員にパンツ見られました
第9章 私と圭介と不協和音と
嘘がバレないよう、本当のことも混ぜながら言葉を繋いでいく。できる限りテンションを上げて、いつも通りに。「そっちは仕事どう?」「千冬さんや一虎も元気にしてる?」そんな当たり障りのない会話を数分してから、また連絡するからと言って圭介と別れた。
なんだかどっと疲れたなぁ。仕事疲れではないこの疲れには達成感なども感じられず、徒労感ばかりが私という入れ物に溜まっていく。
あーできることなら今すぐ布団にダイブしたい。化粧も落とさず、服も着替えず、なにもせず布団へ行きたい。なんて言いながら実際は全部済ませてからいくんだけどね。明日も仕事だし。
「ビールまだあったかなぁ」
最近はお酒とおつまみしか入っていない冷蔵庫を思い浮かべるが、すぐ現実へと引き戻された。私のアパートの前に誰かが立っているのが見える。外灯があって明るいとは言え、もう辺りも暗いら変な人がいたっておかしくはない。身を引き締めるようにキュツと背筋を伸ばして、その人が立っている階段付近へとちかづく。
私の足音が聞こえたのか、うつむき加減だったその人は顔を上げて私の方へゆるりと視線を向けてくる。「あ」という声が私の耳にも聞こえてきて、やっとそれが誰だか理解できた。
「──彰人?」
誰だかは理解できたが、なんで彼がここにいるのかは全く理解できない。
私を見つけた彰人は鬼のように目を吊り上げながら、こちらへと荒々しく近寄ってきた。いや、なんで。こんなキレられる筋合いないんだけど。
「! お前、彩音になに吹き込んだんだ!」
「なによ、いきなり。近所迷惑だから大きな声出さないで」
「最近、全然連絡がこないんだ!」
「知らないわよ。お店が忙しいからじゃない?」
「前は忙しくても毎日連絡してくれていたんだ! 彩音に嫉妬して、お前がなんか言ったんだろ!」
「──ハア?」