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【場地圭介】ペットショップの店員にパンツ見られました

第9章 私と圭介と不協和音と


「あのあと二人でご飯行ったんです!」
「あれ? 菅野さんって彼氏いなかったっけ?」
「いますよぉ。でも圭介さん……昨日の彼が熱心に誘ってくれたので、なんだか断るの申し訳なくって」

 ご一緒しちゃいました。
 なんて話しているその語尾にはハートマークでも付きそうなほど、軽やかで嬉しそうだ。……そっか、やっぱり私に会いに来たわけじゃなかったんだ。その事実にどうしても落胆してしまう自分が、とてもめんどくさい。圭介がどこで誰といようと私には関係ないはずなのに。
 私の中で彼の存在がとても大きくなってしまっていることに、改めて気づかされちゃったなあ。

「せーんぱい」
「どうしたの?」
「何だかごめんなさい。圭介さん取っちゃって」
「……彼は物じゃないから。取ったも何もないでしょ?」

 できる限り冷静に言葉を返すが、冷静を装いすぎて少し声が冷たくなってしまったことに内心焦る。盗み見るようにして菅野さんを見るが、彼女はこんな私を気にする様子もなく飄々としていた。
 ああ……待って。違う、違うの。どうしてこんなに感情のコントロールができないの? なんで私はこんなにどぎまぎしているの?

「それでも謝っといた方がいいかと思ってぇ」
「そんな必要はないから。気にしないで」
「気にしますよ。だって──夜、ずっと一緒にいちゃったから」

 ひっそりと……しかしハッキリ音として聞こえてきたその言葉に思わず目を見開く。つまりは……そういうことなのだろうか。
 私の考えうる最悪の事態を頭で思い浮かべ、即座にその光景を振り払う。何も考えられなくなるくらいには、私への衝撃が強すぎた。
 あまり悪びれた様子もなく、にこにこと笑顔を携える菅野さんを見てどうしようもなくイラついてしまう。そしてそんな事を考えてしまう自分にも辟易とする。どうしてこんな風にしか物事を考えられないんだろうか。
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