【場地圭介】ペットショップの店員にパンツ見られました
第9章 私と圭介と不協和音と
「ぶっっっさいくだなぁ……」
いつもより早起きして鏡を覗き込めば、腫れぼったい目をした私が写っていて思わず顔をしかめる。あーなんですかこの不細工は。これで出社するとかホントなんて詰みゲーですか。
ふぅ、と息を吐いてからタオルをレンジでチン。その間にもうひとつのタオルを冷水で冷やして濡れタオルを作る。温かい、冷たい、温かい、冷たい、と交互にタオルを目元に置いてできる限り目元の腫れを引かせることに注力する。
もう一度顔を確認するために洗面所の鏡を覗き込めば、いくぶんかマシになった私の顔がそこに写し出された。うん、あとは化粧でなんとか誤魔化そう。文字通り化けてみせるわ。
「とりあえず見られる顔になったでしょ」
右へ左へと自分の顔を動かしながら化粧乗りをチェックする。うん、お客さんに見せられる顔にはなったなった。
時計を確認してから手っ取り早く朝ごはんを済ませ、家を出る。刺すように冷たい風は、私の心の内を表しているようにも思えた。
「おはようございます」
お店について同僚たちと挨拶を交わしては、ロッカールームへと足を運ぶ。そこで制服に着替えながら、あーでもないこーでもないと当たり障りのない会話をしていると昨日の同僚がロッカールームへ入ってきた。
私の顔を見るなり「ねぇねぇ」と好奇心を溢れさせながら近寄ってきた同僚に、何だか嫌な予感がする。取って付けたしたような挨拶に返事をしながら「どうしたの?」と興味なさげに返す。
「昨日の彼氏、やっぱりサプライズだったの?」
そう訊かれて、なんと答えようか悩んでいると「昨日の人はぁ」と真後ろから急に声が聞こえてきて、息を飲む。
今日出勤なのは知っていたけれど……できれば会いたくなかったな。
「私に会いに来てくれたんですよ!」
「え、そうなの?」
「そうなんですよぉ、寒い中わざわざ来てくれたんです」
効果音をつけるならキャッキャッとでも言ったところだろうか。恋する乙女のように可愛らしい顔をした菅野さんは、昨日の出来事を話し始めた。