【場地圭介】ペットショップの店員にパンツ見られました
第9章 私と圭介と不協和音と
「せんぱぁい、お疲れさまでしたー」
「菅野さんもお疲れさま」
正月が明けて二週間。お店の正月休みも明け、日常に戻ってきていた。……というか少し前の日常より忙しくて、嬉しい悲鳴をあげているのが現状です。
お店が正月休みだったこともあってか、ずっと来られてなかった方が見えたり、体重を落としたい方が来たり、デトックス目的の方が来たり……その他もろもろ。
家と仕事場の往復で疲れ果て、机の上には空になったレモンサワーやビールの数々……。干物女とはこのことか、と自分で自分に乾いた笑いを漏らす他ない。
圭介とはメッセージアプリで何度かやり取りを交わしたくらいで、元日以来会えていなかったりする。あー! そろそろ外へ飲みに出かけたーい!
「さん、年末に来てた黒髪ロン毛の人って彼氏?」
「どうしたんです? いきなり」
ロッカールームでお疲れお疲れとみんなに挨拶をしていたら、いきなり同僚にこのようなことを尋ねられて首を捻る。十中八九、圭介のことだろうなあ。
ここで彼氏じゃないと言ってしまうと、菅野さんとのことがめんどくさくなりそうなので肯定も否定もせずになんとかやり過ごす。
「さっき店前片付けに行ったらさ、お店の横で立ってからさんに会いに来たのかと思って」
「え? 圭介が?」
今日は会う約束もしていなければ、ここ三日ほど連絡のやり取りさえもしていないので圭介が店まで来たことに驚く。そんな私を見て「彼氏さん、サプライズだったのかな? バラしちゃった」と微笑ましそうに私を見る同僚に苦笑いを返してロッカールームを出る。
本当に彼なのだろうか? 約束もしていないのに会いに来てくれるのかな? そこまでの間柄ではない気がして、少し複雑な気持ちなる。どこか否定的な気持ちが生まれる反面、本当に彼だったらという期待が膨れ上がるのも事実。
教えてくれた同僚にお礼と別れの挨拶を済ましてお店の外へと向かう。つい足早になってしまっていることに気づき、なんだかんだめっちゃ期待してるじゃん……自分に呆れてしまった。