【場地圭介】ペットショップの店員にパンツ見られました
第8章 私と圭介と初日の出ツーリングと
「なァ」
「んー?」
「ありがと」
「うん」
「ちゃんと出会えてよかった」
「私もだよ」
「俺、ちゃんに言いたいことあってさ。今、言ってもいい?」
「ん? うん、いいよ」
いったい何の話かな。思い当たる節がなくて首を捻っていると、至極真剣な顔をした圭介に見つめられた。その表情に思わず居ずまいを正す。大切なことを言おうとしているのが、ありありと伝わってきたから。
時間にしたらほんの数秒なんだろけれど、なぜだか私には時が止まってしまったのかと思うぐらい時間が長く感じられた。
「俺、ちゃんのことが──」
ぐうぅぅ
「……」
「……ごめん。ほんとごめんね」
圭介の言葉を遮るようにして鳴った私の腹の音。タイミングが悪いというか、よすぎるというか……まさかの出来事に恥ずかしくなって視線を下げれば、頭の上から豪快な笑い声が聞こえてきてより一層顔が火照る。
誰か私を穴に埋めてくれ……!
「このタイミングで腹鳴るとか、ちゃんやっぱ持ってンなー!」
「それ以上何も言わないで……そして忘れて……」
「もうほんと、あー! 最高だワ!」
「ぐぬ……」
熱くなった顔を冷ますように両手でパタパタと仰ぐ。太陽のせいで顔が赤く見えるの、なんて嘘は十中八九使えないくらいに真っ赤だろうな。あーほんとやだやだ!
呟くように咳払いをしてから「話の続きをどうぞ」と伝えるも、圭介は未だに笑いながら首を横に振った。
「いや、また今度でいい」
「え? そうなの?」
「おー。それよりちゃんの腹なんとかする方が大事だワ」
「言わなくていいから!」
「だからもっとペヤング食っとけばよかったのによ」
「モーニング食べたかったんだもん!」