【場地圭介】ペットショップの店員にパンツ見られました
第8章 私と圭介と初日の出ツーリングと
「もっと美人になりたぁぁぁい!」
「それまだ続いてたのか?」
「こうなりゃ言ったもん勝ちだと思って」
「欲深いな」
「神様と仏様にお願い事を一個ずつ頼んだらいいかと思って」
「欲深いな」
いくらでも言うがいい! イケメンに私の気持ちはわかるまい! 人には個体値があるのだよ! ポケットに入るモンスターのようにな!
お願いするのは自由だもーん、タダだもーん。……今年は昨年みたいな思いしたくないし。
「ンなことお願いしなくてもちゃんは可愛いだろ」
私の目元にかかった前髪をどけながら、ずいぶんと真面目な顔して言うもんだから思わず──。
「目ぇ腐ってんの?」
と尋ねてしまった。いや、だってね? 目ぇ腐ってなかったら老眼よ、老眼。近すぎて私の顔が見えていないんだわ、きっと。
そんなことを考えている私をなんとも言えない表情で見ている圭介は、はあと大きなため息をついと。かと思えば私の額にビシッと派手にデコピンをかましてくる。ちょっと前、元旦にー! とか言ってた男はどこのどいつよ! 子の野郎!
「腐ってるわけねーだろ、バカか」
「バカって言う方がバカなんですー」
「ちゃんって俺より頭いいのに俺より頭悪いよな」
「言ってる意味がわかりません」
はあともう一度大きなため息をついた圭介。呆れたような、でもどこか楽しそうな表情の彼を見ていたらなんだか毒気を抜かれてしまった。
いつもなら息をするように悪態をつくであろう私がおとなしいせいか、不思議そうな顔で覗き込まれる。色素が薄めな彼の目に写る私はこたつで丸まる猫のように穏やかな顔をしていた。
「やっぱちゃんかわいいワ」
「お世辞言っても何も出ないよ」
「世辞なんかじゃねーし。本気で思ってる」
曇りひとつない澄んだ瞳に見つめられて「あ、本気なんだ」と他人事のように頭の片隅で考える。
「それにちゃんは心もキレイだしな」
「そうかなぁ? 私は圭介の方が心キレイだと思うけど」
「ンなことねぇ。俺は……間違ってばっかで、取り返しのつかねぇこともやっちまった。最低な男だ」
彼の凛々しい眉毛が力なくに八の字を描く。遠くを見つめているその瞳にはいったい何が写し出されているのだろうか。私にはわからないけれど、私だからわかることもある。
圭介は──。