【場地圭介】ペットショップの店員にパンツ見られました
第8章 私と圭介と初日の出ツーリングと
自分のバイクのサイドバックを開けてミルクティーを突っ込んでいると、その横から圭介がコーンスープも入れてくれた。いらないのか確認するも「飲みたかったんだろ? やるワ」と言いながらサイドバックへと入れてくれる。私が言った些細なこと、ちゃんと覚えててくれるんだね。
「眠気覚ましにコーヒー飲も」
「俺もー」
「圭介はブラック派?」
「そうだな。別に砂糖入ってンのも嫌いじゃねーけど」
「ブラックコーヒーとチョコの組み合わせが最高に好き。私の棺桶は花じゃなくてチョコで埋め尽くしてほしい」
「俺はペヤングだな」
「べっちょべちょになりそうね」
「チョコもだろ」
っていうか元旦になんつー話てんだ、俺ら。とおかしそうに笑った圭介につられて私も顔を綻ばせる。一年前の私に彰人と早く別れろって教えてあげたい。そしたらこんなにも素敵な出会いがあったんだよって。まぁ一年前の私はそんなこと言っても信じないかもしれないけどなー。
最初は薄青く白んでいた空も、海から顔を覗かせ始めた太陽が辺りを燃やすようにオレンジ色の光を放つ。朝焼けとはよく言ったものね、本当に燃えているみたい。
全てを終わらせてしまいそうにも見えるこの空が、私と圭介の顔を鮮やかに照らし出す。ああ……ただの日の出なのに、どうして元旦ってだけでこんなにも清らかな気持ちになれるんだろう。目を閉じ、澄んだ空気を肺いっぱいに溜めて──。
「今年こそは彼氏作りたぁぁぁい!」
「は!? ンだよ急に大声だして!」
「縁起いいからお願い事を言ったら叶うかと思って」
「んな七夕みてェなことあるか?」
「七夕もお願い事を叫んだりはしないけどね」
「確かに」
ふむ、と何かを考え込むように顎へ手を当てた圭介は大きく息を吸い込んだかと思うと「ちゃんの願いが叶いますよーにッ!」と私に負けないくらい大きな声で声を放った。
予想外の出来事にぱちくりと目を瞬かせていると、隣の圭介は小さい子どものように口を大きく開けて豪快に笑い始めた。辺りに彼の笑い声が響き渡る。