【場地圭介】ペットショップの店員にパンツ見られました
第8章 私と圭介と初日の出ツーリングと
「誰彼構わずやンねぇよ」
「ふぅん?」
「むしろ勘違いしてほしいやつほど、してくんなくて困ってんだワ」
「……え? 圭介、好きな人いるの?」
ざわざわと心がさざめく。とっさに訊いてしまったことを激しく後悔しながら、圭介の顔色を伺う。好きな人いるかどうかなんて訊かなきゃよかったのに……ここで「いる」なんて言われたらショック受けるの私じゃん。
ちらり。私の目を見たかと思えばすぐに視線を外し、圭介は「いる」と端的に答えた。……あー、そうですか。そんな気はしましたけどね。
「へぇ、どんな人なの?」
よかった、声上ずらなかった。あくまで普通に接しないと。普通に、ね。
「そうだなァ。とにかくやんちゃなんだよな」
「やんちゃ」
好きな女の子の表現になかなかやんちゃって言葉使わない気がするんだけど、逆になんだかそこが圭介っぽい気もする。
「口より手が出るタイプでよ。すぐ攻撃してくっからイラつくこともあんだけど、ふとしたときに見せる表情とか反応が可愛くて憎めねぇんだよなァ」
「めっちゃ好きじゃん」
「毎日のように見てたら情が湧いてきたんかもな」
優しく細められた目元からは、その人のことが本当に好きなんだ、と言うことが伝わってくる。こんなにも慈愛に満ちた眼差しを向けられている人が果てしなく羨ましいし、少し憎い。心の奥から顔を出そうとするどろどろとした感情に蓋をしても、隙間からこぽりと溢れるソレは本当に厄介。新年早々、幸先が悪すぎてもはや笑えるレベル。
男を見る目がないかもしれないとは思っていたが、私には男運もないのかもしれない。
「何か守ってやりたくなるんだよなァ」
「可愛らしい女の子なんだね」
「女の子ってか今、五ヶ月なんだけどよ」
──ん? 五ヶ月? 何が五ヶ月?
圭介の好きな人が五ヶ月? 今のニュアンスだと生後五ヶ月ってことよね? 二十七歳五ヶ月とかじゃないわよね? もしそうだとしたら犯罪の匂いしかしないんだけど、警察に連絡した方がいいのかしら。
口の端をひくひくとひきつらせている私を一瞥してから、圭介は何てことのないようにまた話を続ける。