【場地圭介】ペットショップの店員にパンツ見られました
第8章 私と圭介と初日の出ツーリングと
「食うか」
「食べよ食べよー」
いただきます。と二人声を揃え、肉まんとピザまんにかぶりついた。んー美味しい! 中のお肉も美味しいけど、このふかふかした皮が好きなのよねぇ。
口をもごもごと動かしながら幸せを噛み締めていると、目の前に圭介の顔が迫ってきたかと思うと──。
「あー」
ばくっ
「……へ?」
大口を開けて、私の肉まんをかじっていった。──は?
「私の肉まん!」
「ア? 半分コだろ?」
「ミルクティーとコンポタだけじゃないの!?」
「全部だろ、全部」
「最初にそう言ってくれたら半分にちぎったのに」
「いーんだよ、このまんまで」
何がいいのかさっぱりわからないけれど、圭介がいいと言うんだからいいんだろう。きっと。まあ、私の肉まんを勝手に食べた罪は重いけどね!
ん。と肉まんを持っていない方の手を差し出せば私の意図したことが伝わったのか、ピザまんを私の口元まで運んでくれる圭介に甘えて大きな口でピザまんにかぶりつく。こっちも美味しいー!
「あ」
「んぐっ、どうしたの?」
「口元にトマトソースついた」
「え、うそ!」
「マジ」
「とれた?」
「残ってる」
「マジか」
スマホのインカメラで確認しよ。そう思い、ポッケに手を入れてがさごそとまさぐっていると、私の目の前にさらりと黒い髪が垂れてきた。何かと思い顔を上げれば、目の前には圭介サンのご尊顔。「は?」と私が声を上げたと同時に、私の口元を圭介が指でぬぐう。
三秒ほど時が流れてからハッと我に返る。慌てて自分の口元に手を当て目を白黒させている私をよそに、圭介は自分の指をぺろりと舐めて「ガキかよ」と優しく目を細めた。
「……はぁ」
「ンだよ」
「誰彼構わずこんなことしてるの? 今まで勘違いさせた女の子たくさんいそうだなぁと思って」
本音を悟られないように、できるだけ興味が無い振りをする。呆れた様に言葉を返した私を見て圭介は眉根を寄せるたが、私には何が不満なのかわからない。
不満があるのは私の方だよ。何でいつも距離感バグってるの? お陰で死期が早まりそうなくらい、心臓がたくさん動いている。私の気持ちも知らないくせに呑気なものよね、ホント。