【場地圭介】ペットショップの店員にパンツ見られました
第7章 私と場地さんと年越しと
「ちゃん、千冬とか一虎は名前で呼ぶのに、俺だけ名字で呼ぶだろ?」
「え? あー確かに」
「それだよ! それ!」
「どれ?」
「何で俺だけ名字なんだよ! 俺のことも名前で呼んでほしいンだけど」
「──は?」
俺ノコトモ名前デ呼ンデホシイ?
脳内処理が追い付かなくて、思わずカタコトになってしまう。いや、だって、え? モヤモヤしてた理由が、私が場地さんのことだけ名字で呼んでいたからってことよね? 何そのかわいい理由。
場地さんを名字で呼ぶ理由なんて三人の中でたまたま一番最初に会ったからって言うのと、千冬さんと一虎が場地さんのことを名字で呼んでるから、ってだけなんだけどな。あんなに残念な出会いを果たした直後にいきなり下の名前で呼ぶとか……そんな防弾ガラスなような心は持ち合わせていないので、私。
千冬さんと一虎を名前で呼ぶ理由だって、場地さんが二人を名前で呼んでいるからってだけで、そんな体操な理由がある訳じゃないしね。一番最初に会ったのが千冬さんか一虎だったら、きっと彼らのことも名字で呼んでいたいたでしょうし。
「名前で呼んでほしかったの?」
「だってズリィじゃん。ちゃんと最初に仲良くなったの、俺なのにさァ」
「ふふ」
「何笑ってンだよ」
「ううん。圭介さんも可愛いところあるなぁと思って」
「!」
「ご満足ですか?」
「圭介」
「ん? さんもいらねェ」
だからまだ満足してねェ。としたり顔で言うもんだから「調子に乗んな」って言葉と共にデコピンをくらわせておいた。
「新年早々デコピンするやついるか!?」
「いるじゃない。圭介の目の前に」
「──! 今!」
「呼んでほしかったんでしょ? ちゃんに感謝しなさいよね、けーすけ」
イタズラが成功した子どものように意地悪く笑えば、場地さん──圭介は、ぱちくりと目を瞬かせたあと口の端をニッと上げてから、私と繋いでいる手をぎゅっと強く握りしめた。