【場地圭介】ペットショップの店員にパンツ見られました
第7章 私と場地さんと年越しと
頭の上から爪先まで値踏みされるように見られている気がして、どうにも居心地が悪い。困ったように苦笑いだけ返していると、いきなりぐっと肩を抱き寄せられる感覚。まさかと思って横を見ると、しっかりと場地さんの手が私の肩に回っていた。
「このあとツーリング行くから止めてもらったんだワ」
「この寒い中ツーリングですか? 信じられなぁい」
「ア? オマエの意見とかどーでもいいし」
ジロリと二人を見下ろした場地さんは、なんとも心底煩わしそうな顔をしながら私の肩に置いてある手の力を少し強めた。……心配、してくれてるのかな。
「それによォ、俺以外とドクセンヨク? 強いんだワ」
挑発したいのか、それとも当て付けか。私の髪の毛にくるくると指を巻き付けてもてあそぶ場地さんは彰人の方を見ながら言葉を続ける。
「ちゃんの可愛い姿を他のやつらに見せるとか、ぜってぇヤダ」
後方じゃなくて真横で彼氏面してる人のことは何て言うのかな? そのまんま真横彼氏面? まさか──まだこのやんごとなきお遊びが続いていたとは。
時計を確認すると今はまだ午前二時。初日の出は約四時間後だけど、もうこの場にあんまりいたくないなぁ。この二人と一緒にいると、また惨めな気持ちを思い出して気分が沈んできちゃうから。……うん。
くいくい、と場地さんの服の裾を引っ張って気持ちばかりのアピールをすれば、彼はきちんと気づいてくれて「どうした?」と私のことを気にかけてくれる。──優しすぎるのも罪だなぁ。今はそれがありがたいんだけど。
「日の出には早いけど、バイク走らせたいから行こ? 圭介さん」
「! ……そうだな、早いけど行くか!」
「じゃあ菅野さん、また仕事場で」
何か言われる前に、と素早く踵を返して駐輪場の方へと向けて歩く。私の肩に回されていた場地さんの手は、今は私の左手の中に収まっている。……と言っても、彼の手の方が大きいから実際にはだいぶとはみ出ているのだけれど。