【場地圭介】ペットショップの店員にパンツ見られました
第7章 私と場地さんと年越しと
「まだ日の出まで時間あるけどどうする?」
「もうちっとここでブラブラしてから行くか? 海浜公園何もねーしな」
「なんか温かい食べ物コンビニで買っていきたいね」
「それもいいな。朝飯もどっか食いに行きてェ」
「モーニングやってるとこも探そっか」
「おー」
スマホをポチポチとしながら海浜公園近くでモーニングをやっているお店を探す。あ、このおにぎり屋さんの朝ご飯美味しそう……お味噌汁飲みたい、お味噌汁。体の芯から温まりたいよね。
場地さんに「ここ行きたい」と伝えれば、二つ返事でオッケーを貰えた。ふふ、楽しみ。
「新年早々デートかよ」
「ンだよ、羨ましいのか? 一虎」
「独り身は独り身同士慰め合うから羨ましくありませーん。な? 千冬」
「あ、俺このあとタケミっちらと約束してるんで」
「は? この裏切り者!」
「いや、前から言ってあったじゃないスか」
俺も連れてけ! と千冬さんに駄々をこねている一虎を見ていると、急にぐんっと後ろに腕を引かれて足がふらつく。何事かと確認する間もなく、ぐんぐん引っ張られ人混みの中へ。千冬さんと一虎はあっという間に見えなくなってしまった。
「ねえ」
「……」
「ねえ、場地さん」
「どーした?」
「どーした? は私の台詞。場地さんこそどうしたの? 千冬さんと一虎見えなくなっちゃったよ?」
「どうせ後で別れるんだから、ソレがちょっと早まっただけだろ」
「それならそうと、ちゃんと新年の挨拶したかったかな」
「俺と二人は不満か?」
先ほどまでとは違う、少し抑揚の抑えられた声に思わず目を見開く。少しだけ私の方を振り返った場地さんの顔は──あまり表情がない。この人はいったい、何を思って、何を考えているのだろうか。私にはそれが、全くわからない。
一呼吸置いてから彼の名前を呼ぶと「ア?」と少し不機嫌にも聞こえるような声色で返事をくれたので、繋がれていない方の手で、ぶにっと頬を鷲掴みする。タコのように口を突き出した場地さんはパチクリと目を瞬かせて、私を見下ろした。ったくもう。