【場地圭介】ペットショップの店員にパンツ見られました
第2章 私と場地さんとパンツと
そう言うと私の頭をわしゃわしゃと撫でた場地さん──と呼ばれていた彼の手をぺしっと払いのける。私を犬かなんかだと思ってんのか、この人は。あとパーソナルスペースとコミュ力どうなってんのよ。ぼさぼさになった髪の毛を手櫛で整えていると、今度は千冬さんにじーっと見つめられる。なに? ここにはイケメンと動物以外存在しないのかな?
「場地さんの知り合いですか?」
「違います」
「知り合いではねーな。顔見知り?」
「顔見知りでもありません」
「ンだよ、俺は昨日見たぞ」
「……どこでですか」
「昨日の夜にオマエ、こっから近くのコンビニで男に絡まれてたろ」
そう言われて、はたと動きを止める。なんてことかしら、思い当たるふししかないわね。そう思いなが軽く頷くと「だろ?」なんて自慢げな場地さん。どこに自慢する要素があったかわかんないけど、嬉しそうだからほっておこう。
「そのコンビニで雑誌読んでたらガラス越しに絡まれてるオマエが見えてさ、助けてやろーと思ってコンビニから出たんだよ」
「さすが場地さん! かっけぇッス!」
「千冬ぅ、ちょっとシーな」
「はい!」
自分の唇に人差し指を当ててシーとしている場地さんと、元気よく返事をして背筋を正した千冬さん。少し眺めていただけで、彼らの関係が仲睦まじいものだということはよくわかる。……でも店長は千冬さんの方なんだなあ。ネームプレートに店長って書いてあるし。
店長に敬語使われて敬われる店員……場地さんってなんかスゴい人なのかな。
「そしたらさァ! コイツ、男の顔面をグーで思いきり殴りやがってよ!」
自分の拳を握って、私が殴る真似を意気揚々する場地さん。
「そん次に回し蹴りかましてたんだけど……そん時に見えちまったんだよな」
「何がッスか?」
「水色レースのパンツ」
なんかスゴいバカな人だったわ!!!
殴りそうになる気持ちをなんとか抑え「いやーいい蹴りしてたワ」なんて笑っている場地さんの隣で、千冬さんは、水色レース……と呟きながら顔を赤くして視線をさ迷わせている。ほんとちょっとヤメテホシイ。