【場地圭介】ペットショップの店員にパンツ見られました
第7章 私と場地さんと年越しと
「えっ!?」
「にぃ!」
状況を理解できていないのは私だけのようで、千冬さんまでもが何か叫びだした。さん、にぃ、って来たらもしかして……そう思って右隣の場地さん見ると、私の方を見ていたようでバッチリと視線が交わる。ニッと口の端を上げて「いくぞ」と声をかけて──。
「いち!」
ハッピーニューイヤー!
新年の挨拶と共に高く跳び跳ねた三人からワンテンポ遅れて、私もジャンプする。周りにも同じような人がたくさんいるので、場地さんが言っていた準備はこれだったのかと今になって理解する。
「びっくりしたぁ……」
「ン? ジャンプすんのってコーレーギョージじゃねぇの?」
「初詣に行かない私からしたらそんな恒例行事知らないから、教えておいてほしかったデス」
「、友だちいねぇの? 寂しいやつだな」
「一虎ぁ、その一言も二言も余計なのなんとかならない? いい加減にしないと口塞ぐよ」
「口で口を塞いでくれるなら大歓迎なんだけど」
「千冬さん、私の身代わりになって。そして逝って」
「断固拒否でお願いします」
愛らしい顔を無にしながらお断りしてきた千冬さん。そんなところも可愛いので身代わりはなかったことにしようと思います。可愛いは正義なので。長期的に見たときに、今ここで彼が天へ召されてしまうと後々の私の癒し担当が不在になってします。これは由々しき事態だ! 世界の損失だ!
うんうん。なんて一人納得していると、不意に甘い香りに鼻をくすぐられた。この匂いは──。
「甘酒配ってンな」
「甘酒!」
「ちゃん、甘酒好きなんか?」
「好きー! ね、貰いにいこ?」
離すタイミングがわからなくて、先ほどのジャンプからずっと繋がれたままの手をぐいぐいと引っ張って、場地さんを引きずるような感じで甘酒のところまで歩いていく。はやる気持ちが全面に出すぎて、ちょっと前のめりになっちゃったけど、まぁよしとしよう。
零時ちょうどから配り始めたらしく、私たちの他にも甘酒を貰いにとたくさんの人が列をなしている。今か今かとその時を待っていると、隣から笑い声が聞こえてきたので顔を上げた。場地さんが私の方を見ておかしそうに笑っている。