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【場地圭介】ペットショップの店員にパンツ見られました

第7章 私と場地さんと年越しと


「千冬困ってンだろ」
「え? 千冬さん困ってるの? 私にしがみつかれて嫌だった?」
「え!? いや、別にそんなことは……」
「私は千冬さんとくっつくと、あったかーい! ってなって幸せだよ?」
「最後の一言聴いたら突き放したくなりました」
「この真冬のように冷たい男だな、泣くぞ」

 みっともなく泣きわめくぞ、アラサーの本気舐めんなよ。そんな意味を込めて口をへの字に曲げていると、後ろからぐいっと首根っこを掴まれて「ぐえ!」と、なかなかリアルでは聞くことのできない奇声をあげてしまう。
 く、首絞まってそのまま昇天するかと思った……。首を擦りながら後ろを振り返ると、面白くなさそうな場地さんが未だに私の首根っこをひっつかんでいる。

「ちゃんさァ……」
「ん?」
「さみぃなら、俺とくっついててくンね?」
「ぎゃ! 場地さんの手ぇ冷たい! あ、ちょ、袖から手を突っ込まないで!」

 さみぃさみぃと壊れたロボットのように言葉を吐く場地さんは、私の服の袖から冷えきった手を突っ込むだけでは空き足らず、もこもこムートンがチラ見している私の首元へと顔を埋めてもう一度「さみぃ」と呟いた。
 こんな調子で今までの人生どうやって冬を乗り過ごしてきたんだろう。よく凍死しなかったなぁ……。

「……何ニヤニヤしてんだよ、一虎」
「珍しい場地が見られたと思ってさ」
「うっせ」
「ねぇ、場地さん。このままだと歩きにくいんだけど」
「何とかしろよ」
「理不尽かよ。無茶言うなよ」

 ふん! と勢いよく前に一歩進み出そうとしても、私に全体重をかけた場地さんはびくともしない。重たいいい……骨粗鬆症の人だったら骨折れてるんじゃない? ほんともう。

「って、諸君! こんなことしてたら、もうすぐ日付が変わるよ!」
「お、あと一分じゃん。一虎、千冬ぅ、準備はいいか?」
「オッケー」
「はい!」

 準備? 年越しに準備とかあるの?
 そう思っていると右手を場地さんに、左手を千冬さんに掴まれ、右へ左へと視線をうろつかせる。この手はいったいどうしたらいいのだろうか?
 パッと顔をあげたら目があった一虎さんは、そのキレイな顔に意地悪い笑みを浮かべて「さんっ!」といきなり大きな声を出したので、思わず肩がぴくりと跳ねる。
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