【場地圭介】ペットショップの店員にパンツ見られました
第7章 私と場地さんと年越しと
「さみぃ……」
「場地さん、カイロ入ります?」
「あんがとな千冬ぅ」
「オマエ、場地のかーちゃんかよ」
「千冬ママー私のカイロはー」
「俺はちゃんのママじゃありません」
「ちぇっ」
ただいま平成二十九年の十二月三十一日、時刻は夜中の十一時半。大晦日に「XJショップの三人で初詣に行くからちゃんも来ねェ?」と場地さんに誘われたのはつい先日の出来ごとだ。
特に予定もなかったし、昨年お世話になった人たちと一緒に年越しをするのも楽しいかもしれない。そう思って二つ返事でオッケーして、今に至る。周りにも私たちと同じような初詣客がわんさか溢れており、どこぞのアニメのように「人がゴミのようだあ!」と叫びたくなってくる。それくらい人がいっぱい。
「初詣なんて久しぶり」
「さんは初詣行かない派なんですか?」
「お家でゆっくりしたい派かなー。千冬さんは初詣毎年行ってるの?」
「はい。三人で来たり、他の友人も一緒だったり」
「それは毎年賑やかな年末年始だねぇ」
私と千冬さんの少し前を歩く二人の背中を見ながら、昨年も行われていたであろうペットショップ三人組の初詣を想像して思わず笑いが込み上げてくる。
出店を見回しながら「腹減ったワ」「早くね?」と会話をしている前の二人から千冬さんに視線を移す。私の熱視線に気づいたのか、こちらを向いた千冬さんは「どうしました?」と小首を傾げて尋ねてきた。はい優勝。もう顔面が優勝。年末年始にイケメン拝めて私は幸せよ。
「今日はバイクでここまで来たんですか?」
「うん。このあと場地さんと初日の出ツーリングするから」
「いいですね」
「千冬さんも来る?」
「いえ、俺はダチと会う約束してるんで」
「そっかそっか」
「また今度お願いします」
「こちらこそだよー。そんときは一虎さんも呼んで四人で行こうね」
またひとつ、来年の楽しみが増えたなぁ。ふふ、嬉しい。
初詣を終えたあとは行こう行こうと言っていながら、予定が合わなくて行けていなかったツーリングへ場地さんと繰り出す予定。そのため今日は、初詣にも関わらずムートンのフライトジャケットというこの場にあまり似つかわしくない格好。