【場地圭介】ペットショップの店員にパンツ見られました
第6章 私と場地さんと場地さんみたいな人と
状況が飲み込めなくてボーッと立っていたら「早くしろ」と急かされたので、そそくさとソファへ座る。そんな私の後ろへと立った場地さんはドライヤーのスイッチを入れて、私の髪の毛へと温風を当ててくれた。すっかり冷えた頭に当たる暖かい風がとても心地よい。
本当に乾かしてくれるんだ……と思いながら、不意に私の髪をすくように触れた場地さんの手に驚いて、ピクリと肩を揺らす。
優しく、頭を撫でるように手を動かしたり。髪先をもてあそぶように、ハラハラと髪をすいてみたり。まるで恋人にするようなその動きに、なんだか落ち着かない。
「なんかさー」
「うん?」
「こうやってると、店にいる犬思い出すワ」
わお、恋人のようどころか犬だと思われてました。人ですらなかったよ。
「そんなこと言ってると噛みつくわよ」
「おーこわ」
「ワンワン。なんてねー」
「ちゃんが犬だったら、きっと駄犬だな」
「ぶっ飛ばすぞ」
「そういうとこな」
「こういうこと言うのは場地さんにだけでーす。ちゃんと人を選んでますからー」
「質ワリィー」
ケラケラ笑いながら「終わった」と言ってドライヤーを片付けに行ってくれる場地さんの背中を見送りながら、内心ため息をつく。
ペットショップの犬と同等の扱いて、どうなの私。嫌われてるよりはいいかもしんないけどさあ。そろそろ泣くぞ?
「ちゃん、もっ回寝る?」
「んー……私はもう起きてようかな。そんで朝一とかの電車で帰る」
「なんならバイクで今から送ってやろうか?」
「いや、それはさすがに申し訳ないから大丈夫だよ。場地さん寝るでしょ?」
「や、俺も起きるワ。寝れそうにねーし」
ぐぐっと伸びをした場地さんはドライヤーをそこらへんに置くと、私の隣へと腰を下ろした。場地さんの重みで一気に沈んだソファに、私も体を預けるように深く座り、隣にいる場地さんを見上げれば、彼もこちらを見ていたらしくパチリと視線がぶつかった。……ど、どうしたんだろう。顔に穴開きそうなんですけど。