【場地圭介】ペットショップの店員にパンツ見られました
第6章 私と場地さんと場地さんみたいな人と
なんてこった、この人に羞恥心というものは存在しないのだろうか。あと思いやりの方向性がちょっとズレると思います。場地さんに洗ってもらったブラとパンツ履くのはばかられるんですけど!
……洗おう。家帰ったら履く前に自分でもう一回洗おう。それでチャラでしょ。何がチャラかわかんないけど。
自分を落ち着かせるために、すーはーすーはーと大きく息を整える。──いや無理だわ、全部落ち着かせられないわ。
「場地さんのせいでもうお嫁に行けない……」
「オーゲサだなぁ」
「大袈裟じゃないし。結婚前の女の子が独身男性に下着手洗いしてもらうってホントなんて苦行」
「クギョー?」
「マジツラたんってことです」
「まじつらたん」
くぅ……と泣きそうになりながらスウェットを握りしめていると「結婚できそうになかったら誰か紹介してやるから。な?」と何の慰めにもならない言葉をかけてきた場地さんには頭突きをかましておいた。
「いってぇ!」
「静かにしないとお隣さんに壁ドンされちゃうよ?」
「ンのやろ……」
「はー……場地さんのせいで目が覚めちゃった」
「俺の台詞だワ。アゴいてぇ」
「自業自得よ。それよりドライヤーどこ?」
「ア? 出しておいてやっただろ」
「ええ?」
この際、下着のことは諦めよう。もうここまで来たらどうでもいいわ。そんなことより私の髪の毛の方が問題になってきた。いくらエアコンがかかっているとは言え、濡れたままでいたら風邪ひいちゃう。
へぷしっ! とくしゃみをしながらもう一度脱衣所へ戻ろうとした私を押し退け、我先にと場地さんが脱衣所へと向かっていった。いや、ほんと、私の扱い雑すぎな。
そう思いながらもう一度くしゃみをしたところで、場地さんがドライヤー片手にリビングへと戻ってきてくれた。おお、待ち焦がれたよドライヤー。
「ありがとー」
「座れ」
「ん?」
「そこ、座れ」
乾かしてやっから。と言いながら場地さんが指を指したのはソファ。……髪の毛乾かしてくれるってこと?