【場地圭介】ペットショップの店員にパンツ見られました
第6章 私と場地さんと場地さんみたいな人と
「そうだな」
「ん?」
「好きなもの半分コできんのは、嬉しい」
「……ふふ。でしょ?」
「おう」
「だからさ、私は自分の人生を半分コしてもいい! って人を探して結婚するの」
「シナンのワザだな」
「余裕だし。マジふざけんな」
私のことバカにしすぎだぞ、場地さん。その気になれば結婚相談所や婚活やお見合いがあるんだからな! 明らかに機嫌が悪くなった私を見て「ちゃんジャジャ馬だからなー」とか言っている場地さんの足をもう一度踏んでやろうとしたけど、避けられてしまった。チッ。
「そーいうとこだぞ」
「おとなしくしてても振られたもん!」
「確かに」
「納得すんな」
「俺みたいなやつならさ」
──ちゃんとも合うンじゃね?
一呼吸置いて囁かれた言葉は、放たれた鋭い矢のように私の心臓へと突き刺さった。ぐりぐりと抉られるように、胸が痛い。
「……そうね」
「だろ?」
「場地さん“みたいな人”なら合うかも」
場地さんじゃなくて、場地さんみたいな人。そんな人いるわけないじゃん。いくら場地さんと似てようがそれは全部ニセモノだもの。場地さんに惚れることはあっても、場地さんみたいな人に惚れることは──ない。
握られて温かいはずの右手が、ずいぶんと冷たく感じた。
「がんばって見つけろよな」
「それより千冬さん飲みに誘った方が次に繋がる気がする」
「めっちゃ千冬大好きじゃん」
「うん、好きだよー。可愛いもん」
でも千冬さんへの好きと場地さんへの好きは違うんだよねぇ……。私が千冬さんと付き合いたいって言ったら、場地さんは応援してくれるのかな。いつもの笑顔で「おめでとな!」って言葉を私と千冬さんにくれる場地さんを容易に想像できて、なんだか悲しくなった。
ほんとに私、なんとも思われてないんだなぁ。まあ、この関係を続けていくには都合がいいけれど。
「ふーん」
「自分から訊いてきたくせに興味うっっっす」
「……」
「場地さん? どうしたの?」
「なんでもねーよ。おら、家ついたぞ」