【場地圭介】ペットショップの店員にパンツ見られました
第6章 私と場地さんと場地さんみたいな人と
「お。コレ!」
「え?」
「コレ、ちゃんに似合いそーじゃん」
バン! と私の目の前に出されたのはとても美人な外国人モデルの方が着こなしているハイネック、ベルラインのクラシカルウェディングドレス。首からデコルテと、手の指先にかけてレース仕様になっていてとても優雅で気品に道溢れている。けど……これを着た私は想像できない。どんだけ甘い評価にしても、馬子にも衣装って感じがする。
するのに──心の奥で、どこか喜んでいる私がいるの。あーあ、何でかは考えたくないな。場地さんの言葉でこんなにも一喜一憂するなんて、まるで恋する乙女だ。
「私を過大評価しすぎよ」
「そうか? 俺はそんなことねェと思うぜ」
「嘘でも嬉しい。ありがと」
「ちゃんが結婚するときは呼んでくれよな。花嫁姿見に行くワ」
「ちょっとプレッシャーかけないで。今のちゃんには中々の重荷だから」
「新しい出会い見つけねーとな」
「いい人いたら紹介してね」
本当は場地さんのこと気になっているんだけどね、と一言言えたらどれほどよかっただろうか。私にはそんな勇気もなければ、甲斐性もない。愛する人が私の元から離れていく、そんな体験をもう一度するのはごめんだから。
場地さんはきっと、私に執着することなんかない。この人は自由気ままだからこそ、素敵なんだ。この気持ちはそっと閉まっておこう。そうでもしないと、ツラい目に合うのはきっと私だ。
「千冬も一虎もフリーだな」
「よし、千冬さんを今度飲みに誘おう」
「オマエ、千冬のこと好きだよな」
「好きだよ。だって優しいし、真摯だもん」
「……」
「ん? どうしたの?」
「いや、別に。ちゃんと付き合ったら、千冬大変だろうなァと思って」
「それどういう意味よ!」
ぎゃんぎゃんと吠えるように捲し立てれば「悪かったってー」と悪びれる様子もなく言葉ばかりの謝罪をする場地さん。心がこもってないんだよぉ! 心が!
ぷんすかぷん、と唇を尖らせる。どうせ私の彼氏になった人は大変ですよーだ! 別に彼氏まで殴ったりしないし! ほんと失礼しちゃう!